森本刑事の恋愛日記７【完】

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「桑原さんが野毛山署に戻ってきて、課長になったんだって」

『てことは、山倉さんの上司になるってこと？』

「そゆこと」

『へぇ、なんか面白いかも』

「ね、ウケるよね」






こうして寝る前に2人、ベッドでゴロンと並んでゆっくり話をするのは久しぶりだ。





『あ今日ね、つぐみちゃんのピアノの発表会で、めちゃくちゃ頑張ってたって』

「へぇ〜、そうだったんだ」

『今度遊びに行けたら何か弾いてもらおう？』

「いいねそれ」




つぐみちゃんが小さい手で一生懸命音を奏でる姿が想像できる。


絶対に可愛い。








つぐみちゃん、といえば。




『………ひき逃げの事件、県警も捜査してるって聞いた』

「うん、……ちょっと犯人が厄介でね」

『厄介って？』

「…………組の人間かもしれないんだ」

『組？……………あぁ、組…』






ひき逃げされて命を落とした、つぐみちゃんの同級生のお母さんの解剖を興雲大学法医学教室が引き受けていた。



もう1人高齢の男性も亡くなっていて、ひどい事件だ。






『犯人、捕まえられそう？』

「もちろん、絶対に逮捕するよ。逃すわけない」

『だよね。………あ、そういえば、

交通事故…捜査係？の鈴井さんって人、なんか嫌な感じだった』

「ああ、あの人ね、わかる」

『朝顔先生に冷たいこと言ってて。光子ちゃんがすごい顔してた』

「なんか想像つくわ」












『…………つぐみちゃん、寂しくないかな』

「え？」

『里美ちゃんのお世話大変だろうし、平さんも……』

「………桑原さんと朝顔先生なら、上手くやるでしょ」

『…………そうだね、いらない心配しちゃった』

「Aは優しいね」





しばらく話していれば、眠気が襲ってくるのも当たり前。



『ん〜、眠くなってきた』

「そろそろ寝ようか」

『ん……おやすみ』

「おやすみ」





久しぶりに琢磨の“おやすみ”を聞けたこの日は、いつになくぐっすりとよく眠れた。




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