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シーズン1の撮影の時、
一度だけ、ものすごく落ち込んだ時があった。
それは私が演じる高野にとって大事なシーンで、朝顔の物語上欠かせないシーンで、
まだまだ経験の浅い私にはとてつもないプレッシャーであった。
撮影前はいつも、前室という控室で出演者の皆さんと談笑しているのだけれど、
その日はどうしてもそんな気分になれなくて、1人、
ひとけのない廊下のソファに座っていた。
震える手を、震える手で包み込む。
こんなんじゃ、これからやっていけない。
こんなんで、女優名乗る資格なんてない。
しっかりしなきゃ。
でも、そう思えば思うほど、背負うものはどんどん大きくなっていく。
もうやだ………なんて、背中を丸めて顔を手で覆ったとき。
ふわりと暖かい腕が私の肩に回った感触で、顔を上げた。
「……だいじょぶ?」
『……森本くん、』
これあげる、って、差し入れのお菓子を手渡された。
「うまいよ、これ」
『……うん、おいしそう』
包装を破って口にすれば、甘さが口に広がって、気分が落ち着いてくる。
『………おいしい、』
「………俺さぁ、藤咲ちゃんの演技、好きだよ」
『……』
「やりたいようにやればいいんだよ。考えすぎちゃだめ」
優しい声、暖かい言葉、とんとんとされる肩、
すべてに安心して、涙腺は容易に崩壊した。
「あ〜もう、メイクやり直しになっちゃうよ?」
泣かない泣かない、って、子供をあやすように頭を撫でられる。
『……ありがと、頑張れそう』
「ん、頑張って。絶対大丈夫だから」
『うん、』
彼の言う通り、例のシーンはうまくできて、監督からもお褒めの言葉をいただいたし、SNSの反応もよかった。
間違いなく、私が彼に救われた瞬間だった。
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なぽりたん(プロフ) - あおこさん» まだまだ続きますよー!一緒に妄想楽しみましょ!ありがとうございます!! (2021年8月27日 22時) (レス) id: 978682becc (このIDを非表示/違反報告)
あおこ(プロフ) - ドラマ見てたからもしかしたらこのお話もう終わっちゃうのかと不安でしたが、、忘れてましたここは妄想の世界でしたね!続きを楽しみにしてます! (2021年8月27日 3時) (レス) id: 8d319b548e (このIDを非表示/違反報告)
なぽりたん(プロフ) - きょぴさん» ありがとうございます!引き続きお楽しみいただければ嬉しいです^ ^ (2021年8月8日 19時) (レス) id: 978682becc (このIDを非表示/違反報告)
きょぴ - とっても面白いです!!続きが気になります。これからも頑張ってください!! (2021年8月8日 10時) (レス) id: ec3d4fcd2f (このIDを非表示/違反報告)
なぽりたん(プロフ) - ティナロックさん» こちらこそ読んでいただきありがとうございます!! (2021年7月31日 17時) (レス) id: 978682becc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なぽりたん | 作成日時:2021年7月4日 18時