森本刑事の恋愛日記１

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『ありがとうございました』



男が去って行き、高野さんは頭を下げた。







「ご自宅この辺りでしたよね、もう夜遅いですし送っていきますよ」





家の場所覚えてるの、キモいとか思われたかな。





『……お願いしても、いいですか』




返事は控えめながらも、遠慮されるかと思ってたから少しびっくりした。




しつこくナンパされた後だし、怖かったのかな。

心なしか、頬も赤くなっている気もするし。









彼女の隣、車道側に立って歩みを進めて行く。





「高野さんは今日は、お仕事でした？」

『残業してて。森本さんも？』

「はい、報告書たまってて」

『大変ですね、刑事さん』

「みんなそんなもんですよ」






ですかね、なんて笑う高野さん。


恋人を失った頃より、少しは立ち直れているかと思っていたけれど。







まだ別の悩みがあるようにも思えた。








「ていうか、名前、覚えててくださってたんですね」

『、はい』

「ありがとうございます」






それもそうか。

あんな形で警察官にかかわることなんて、人生でそうそうないだろうし。

捜査官の名前って覚えちゃうだろうな。







『…森本さんも、』

「？」

『…嬉しかったです、名前、覚えててくださって』



こちらこそありがとうございますと、彼女はまた頭を下げた。







「いえ！僕も、嬉しかった、です。

……高野さんに、名前、覚えててもらってて」







何言ってるんだろうなって、自分でも思った。

うまく掴めない距離感に、もどかしさを感じた。





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