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「素直だから、答えに辿り着くのが早いのがあの子の良いところね」
「ははっ、そうだな」
悠仁の背中を見送り、少し静かになった地下室で私と悟は笑みを浮かべた。
あの様子なら、きっと大丈夫だろう。
何より、自分の力で人を救えば、それは何よりも己の自信に繋がる筈だから。
「転んだ子に手を貸すのは簡単だけど、一人で立ち上がる方法を教えるのが教師の仕事」
「…とはいえ、そっちは簡単じゃないのよね」
本当に教育というのは難しい。
ましてや、此処は呪術高等専門学校。普通の高校では無い。
教える内容は、戦う術。
自らを犠牲に人を助ける何て事、十代の若者に強いるのは中々に酷な話だろう。
「残酷よね、若者に命を懸けて戦わせるなんて」
「まあな。でもその命を出来るだけ永らえさせる術を教えるのも、僕達の仕事だろう」
確かにそうだと、生徒達の顔を思い浮かべる。
どの子も、呪術や呪いなんてものに触れてこなければ、どんな学生生活を送っていたのだろうと想像してみた。
「恵が普通の高校通ってたら、中学生のまんまヤンキー続けてそうよね」
「あんなクソ生意気な餓鬼がいたら僕はシメるけどな」
恵の中学時代を思い出すと同時に、生意気な態度をとる恵に悟が容赦なくキレ散らかしていた事も思い出した。
恵はあの頃は反抗期絶頂だったのもあって、悟と顔を合わせる度喧嘩をしてはボコボコに負かされ不機嫌になっていたのを思い出し、笑い声が漏れた。
悟も悟で、十三も離れた子供に容赦が無かったのも十分に子供だったと思う。
「ふふっ。貴方達、凄く丸くなったわね」
「んだよ突然、俺は元々尖ってねえ」
僕という一人称や優しい言葉遣いは彼に定着したけれど、時々私の前ではこうやって素が出てしまうのもまた面白い。
二人の成長を一番近くで見てきた私だけれど、本当に丸くなってくれて良かったと思う。
もし恵が中学時代の様なヤンキーのままで、悟が高専時代の頃のままだったと思うと、冷や汗が流れる程には今の彼等に安心している。
「…Aは、よく笑うようになったな」
「…そうね、
幼い頃の自身の顔、ピクリとも動かなかった口角、下がる事の無かった目尻を思い出し、私も丸くなったかもなと、笑みを零した。
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作者名:HamA | 作成日時:2020年12月14日 0時