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142. ページ44

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「無理しないで下さい、虎杖さん」




混乱している悠仁の元へ、先程公園で会った海里という少年が息を切らしながら駆け寄ってきた。

悠仁と暫くの会話をした後、二人はまた屋根の上へと視線を向ける。

そこには、つい先程祓ったばかりの呪霊が居た。




__成程ね、この子が原因か。




諦めの様な表情を浮かべた少年をチラリと横目に、そう思った。

大方、家に帰りたくない理由があるのだろう。

あの呪霊は、この海里という少年が生み出している事は間違いない。

こんな小さな子供がここ迄負の感情を出すとなると、相当心が不安定になっているのだろう。




「はあっ!?祓っても祓ってもキリねえじゃんかよ!」




屋根の上の呪霊を祓ってはまた現れ、祓ってはまた現れを私がこうして考え事をしている間も続けていた悠仁は、苛立ちを含んだ声でそう叫んだ。

祓った所でどうしようも無い、この少年をどうにかしなければ。

手を貸したいところだが、気付きを与えるのが教育だとお父さんも言っていた。




「鬼禱先生!これどうすりゃいいの!」


「一度手出したら最後まで責任持ちなさーい、自分で解決するのよー」




「ひっでえっ!!」なんて嘆きが屋根の上から聞こえてきたが、私が解決してしまったら何の意味も無い。

第一、私は此処に霊鬼では無い確証を得る為に来ただけだ。

悠仁でも簡単に祓える呪霊ならば、私は居なくても良いだろう。




「…お姉さんは、虎杖さんの先生なんですか?」


「ん?…ああ、高校の副担よ。あの呪霊は大丈夫、あのお兄ちゃんが何とかしてくれるから。ちょっと時間掛かるかもだけどね」




「だから、今のうちに家に入りなさい」と少年の背を押し、悠仁が呪霊の相手をしている間に少年を家の中へと促した。

ドアが締まり切るのを確認した所で、スマホが振動し着信を報せる。

名を確認すれば、『伊地知潔高』の五文字。




『あの…回復したばかりなのに申し訳御座いません…。空いてるのが…鬼禱さんしか居なくて…』


「別にいいわよ。丁度用事も済んだところだから」




屋根の上で汗水垂らしている悠仁を横目に、伊地知に場所を聞き電話を切る。

高専からそんなに遠くも無いし、一度来た事があるのなら一人で帰れるだろう。




「悠仁ー、私任務入ったから行くわねー。朝になれば消えるなら一旦高専に戻るのもありよー」


「えっ!?ちょ、鬼禱先生っ!?」




驚く悠仁を他所に、バイクを取りに公園に向かった。




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作者名:HamA | 作成日時:2020年12月14日 0時

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