127.gojo ページ29
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血塗れの服、乱れた髪。
無意識のうちに霊を引き寄せてしまっているのだろう、此方を呆然と見つめる右眼は煌々と輝いていた。
直ぐに彼女の元へ駆け寄り、頬に手を添える。
左眼を隠す前髪を指で退かした時、目隠しもサングラスもしていない事に気付いた。
そして、彼女の左眼の赤の濃さと、額から僅かに生えた角を見て、一気に警戒心を強める。
｢…おい、酒呑。どういう事だ｣
｢【…そう身構えるな。話を聞け】｣
目の前にいるのは彼女であって彼女ではない事を直ぐに察し、彼女の中に巣食う呪いにそう問い掛ける。
いつもならば酒呑の声だけの筈が、彼女の声も重なっており違和感を覚えた。
｢【まともに飯も睡眠も取らずに彼方此方駆け回り、呪力の回復も追いついていない状態だった。…恐らく、最後の任務だったのだろうな。なけなしの呪力全てを使って領域展開し力尽きた。スマホとやらも何処かに落とした様でな、貴様と連絡が取れず儂とも変われなかった】｣
酒呑の説明を聞き目の下の隈を撫で、また随分と無茶をしたものだと顔を顰めた。
身体に幾つもの擦り傷がある。
呪力を反転術式に使うのも惜しかったのだろう。
｢…変わったんなら何で治してやんねえんだよ、酒呑｣
｢【話を聞け。…嬢ちゃんは気を失っていない、流石は儂の器と言ったところだ。頭も身体も働いてはいないがな。僅かに緩んだ制御に付け入っている状態、脳と身体に少し干渉するのが限界と言ったところだ】｣
__嬢ちゃんを此処に送り届ける為だ、この事は黙認して貰いたい。…後は頼んだぞ、五条よ。
徐々に消えゆく酒呑の声、膝から崩れ落ち始めたA。
咄嗟に頬から手を引き、その華奢な身体を優しく抱き留めた。
｢…はあ。勘弁してくれ｣
｢…っ！？Aっ！｣
｢Aさんっ…！？｣
何となく安全な場所に居ることを察したのか、腕の中の彼女はやっと意識を手放し、目を閉じ寝息を立てていた。
教室から恵と野薔薇が血相を変え駆け寄って来て、大丈夫なのか生きているのかとあれやこれやと質問攻め。
｢大丈夫だよ二人共。…硝子の所に連れてくから、二人は次の授業の準備してな｣
そう言っても未だ不安そうな二人を置き去りに、彼女を横抱きし医務室へと急いだ。
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作者名：HamA | 作成日時：2020年12月14日 0時
