鬼神 -参- (ページ27)

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私を中心に、辺りが真っ黒に染まっていく。

空に浮かぶ綺麗な月や星を隠す様に、闇より黒いその暗闇は徐々に範囲を広げていった。

呪術戦の頂点、領域展開。

『魂獄魔鬼廷(こんごくまっきてい)』

私の領域展開は結界で空間を分断しない。

故に、逃げ道が存在する。

だが、その縛りの代わりに底上げされた必中効果。

｢…契眼(かいがん)｣

その言葉と共に、天に現れた巨大な眼。

その透明と表現すればいいのかすら分からない眼は、紛れも無く私の霊眼だ。

その巨大な霊眼を通して視えたのは、呪霊、木、草、虫、動物、その全ての魂。

通常では死んだ者の魂しか視ることの出来ないこの眼は、領域内では呪霊から人間、動物、更には植物まで全ての魂の核を目視する事が可能だ。

加えて、干渉する事も可能である。

__グシャリ

視界の隅で、そんな不快な音を立てながら一体の呪霊が破裂した。

それを皮切りに、次々と呪霊が破裂したり、塵となったり、又は業火に包まれ消えていく。

更には虫や木々までもが粉々になったり、切り刻まれたりと千差万別な消え方をしていった。

領域内の者、生物に限らず植物までも無作為にその魂に干渉し命を奪う。

それが、私の領域展開だ。

｢…疲れた｣

そう言葉を零し、呪霊が全て消えたのを確認し、領域展開を解く。

更地となった周囲を見て、その場に膝から崩れ落ちた。

疲弊しきった身体、空っぽの呪力。

もう限界だと言わんばかりに、鼻血が垂れた。

__頭が働かない、脚が動かない、私は今何をしている。

そんな疑問も次第に浮かばなくなり、遂に頭の中は真っ白になった。

最後に考えていたのは、悟の事だったか。

【嬢ちゃん__】

僅かに、そう酒呑が私の名を呼ぶ声がした。

それからどうなったのか、私には記憶が無い__

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