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__数時間後、千葉県某所
「今日だけで何件回らなきゃいけないの?って話。ねえ、聞いてる?」
「っ…!クソっ…!!!」
クソなんて言わないで頂戴と、眼下に転がる呪詛師の肩から刀を抜き取る。
直後、痛みに耐える様な声と血が溢れ出し私のズボンを汚した。
「あー、まだこれから任務あるのに」
「っ…ぁ"っ…!鬼っ…が…!」
まだそんな事を言う元気があったのかと、刀についた血を払いながら顔の横にしゃがみ込む。
別に鬼と言われた事に対しては特に何も思わない。
酒呑童子という特級呪物と三鬼の魂を身に宿しておきながら、今更「いいえ、私は人間です」などと言うつもりは無い。
__でも、
「何で皆鬼をそんなに怖がるのかしらね?良い子ばかりなのに」
「っ…」
そんなに嫌わなくたっていいのにと、昔から思う。
そりゃ普通の人からしたら鬼=悪という印象があるのだろうけれど。
「私からしたら、善人を騙して金巻き上げてる貴方の方が余っ程恐ろしいわよ?」
「っ…!?…おいっ!辞めろ!」
顔の横から腰を上げ、再度刀を構え直した私を見て慌てふためき、静止の言葉を投げ掛ける呪詛師。
悪いけれど、止めることは出来ない。
重ねた罪が重すぎた。だからこんな事になっているのだ。
「呪術規定に基づき、処刑が決定してるのよ」
「なっ…!おい…辞めろ!辞めろ!!」
幼い頃は何で人を殺すのかと散々疑問に思ったものだけれど、こういうクズは死んで当然だと、この仕事を始めてから心底思う。
お前に金を騙し取られ、苦しんだ者が、この世を去った者が、どれだけいると思ってる。
そこからどれだけの負の感情が生まれ、新たな呪霊が生まれたと思う。
「生に貪欲である事は良い事よ。でも、貴方に生きる価値なんて微塵も無いわ」
「っ…!____」
何かを言おうとしたのだろうけれど、それよりも私の刀が首に届く方が早かった。
何も、感じない訳では無い。
人を殺めるのは、やはり辛い。
でも、それでも__
「助けてあげられなくて御免なさい。怨みは、代わりに晴らしたわ」
【ッ__アリ__ガ__ト_ウ_】
か細く聞こえたお礼の言葉に、私はその場で深く頭を下げた。
遅くなって御免なさい。
助けられなくて御免なさい。
多くの懺悔の言葉で頭を埋めつくしながら、私は手を合わせる__
「霊鬼呪法__術式反転『天ノ霊昇』」
どうか来世は幸せな人生を夢ますようにと、願いを込めて__
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作者名:HamA | 作成日時:2020年12月14日 0時