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119. ページ21

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__数時間後、千葉県某所




「今日だけで何件回らなきゃいけないの?って話。ねえ、聞いてる?」


「っ…!クソっ…!!!」




クソなんて言わないで頂戴と、眼下に転がる呪詛師の肩から刀を抜き取る。

直後、痛みに耐える様な声と血が溢れ出し私のズボンを汚した。




「あー、まだこれから任務あるのに」


「っ…ぁ"っ…!鬼っ…が…!」




まだそんな事を言う元気があったのかと、刀についた血を払いながら顔の横にしゃがみ込む。

別に鬼と言われた事に対しては特に何も思わない。

酒呑童子という特級呪物と三鬼の魂を身に宿しておきながら、今更「いいえ、私は人間です」などと言うつもりは無い。

__でも、




「何で皆鬼をそんなに怖がるのかしらね?良い子ばかりなのに」


「っ…」




そんなに嫌わなくたっていいのにと、昔から思う。

そりゃ普通の人からしたら鬼=悪という印象があるのだろうけれど。




「私からしたら、善人を騙して金巻き上げてる貴方の方が余っ程恐ろしいわよ?」


「っ…!?…おいっ!辞めろ!」




顔の横から腰を上げ、再度刀を構え直した私を見て慌てふためき、静止の言葉を投げ掛ける呪詛師。

悪いけれど、止めることは出来ない。

重ねた罪が重すぎた。だからこんな事になっているのだ。




「呪術規定に基づき、処刑が決定してるのよ」


「なっ…!おい…辞めろ!辞めろ!!」




幼い頃は何で人を殺すのかと散々疑問に思ったものだけれど、こういうクズは死んで当然だと、この仕事を始めてから心底思う。

お前に金を騙し取られ、苦しんだ者が、この世を去った者が、どれだけいると思ってる。

そこからどれだけの負の感情が生まれ、新たな呪霊が生まれたと思う。




「生に貪欲である事は良い事よ。でも、貴方に生きる価値なんて微塵も無いわ」


「っ…!____」




何かを言おうとしたのだろうけれど、それよりも私の刀が首に届く方が早かった。

何も、感じない訳では無い。

人を殺めるのは、やはり辛い。

でも、それでも__




「助けてあげられなくて御免なさい。怨みは、代わりに晴らしたわ」


【ッ__アリ__ガ__ト_ウ_】




か細く聞こえたお礼の言葉に、私はその場で深く頭を下げた。

遅くなって御免なさい。

助けられなくて御免なさい。

多くの懺悔の言葉で頭を埋めつくしながら、私は手を合わせる__




「霊鬼呪法__術式反転『天ノ霊昇』」




どうか来世は幸せな人生を夢ますようにと、願いを込めて__




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作者名:HamA | 作成日時:2020年12月14日 0時

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