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｢送ってあげれなくて御免ね？気を付けて帰って｣
｢良いですよ！出張頑張ってくださいね｣
｢あんま無理すんなよ｣
心優しい生徒に癒しを貰い、病院前で手を振り別れた私達。
｢さて｣、と深く息を吐き、刀を鞘袋に収めながら次の現場へと向かう。
｢埼玉は此処とあと一件、栃木で三件で…。千葉一件、神奈川は最後に回す__｣
一級呪霊、呪詛師相手の任務から先程の様な結界の修繕の任務や霊眼を使った死因不明事件の助言まで任務内容は様々だ。
出来れば夜には東北の方に移動していたいが、終電ギリギリという所だろうか。間に合わなかったらバイクで向かうのもありか。
初日からこんなにギチギチのスケジュールで果たして早めに帰る事は出来るのかと苦笑を浮かべる。
｢…やるしか無いわよね｣
文句を言っても任務は片付いてくれやしない。
私にしか出来ない仕事もある。
偶にこんな任務誰でも出来るだろうと思う時もあるけれど、任されてしまったら仕方がない。
｢…そういえば、悠仁と建人くん神奈川で任務って言ってたわね｣
近況報告をマメにしてくれる悠仁から今朝送られてきたLINEの内容を思い出す。
どうやら変死体が映画館で発見されたとかだった気がするが、いきなり惨い事件に当たったものだ。
｢神奈川行った時会えるかしら｣
丁度夜になりそうだし、任務が早めに終われば夕飯でも一緒に行こうと思い歩いていれば次の現場に到着し、脳を仕事へとシフトチェンジする。
これ迄に何度も見てきた様な廃れた工場。
敷地内へと一歩を踏み入れ、帳を下ろす。
｢闇より出でて 闇より黒く その穢れを禊ぎ祓え｣
目隠しを少しズラし、呪いを放出させれば溢れ出てくる呪霊達。
随分と溜まったものだと、背中に担いだ刀を取り出す。
__さあ、始めましょうか。
地獄の長期出張の幕開けだ。
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作者名：HamA | 作成日時：2020年12月14日 0時
