44.gojo ページ46
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｢…悟。悠仁は多分、宿儺と縛りを交わしてる。｣
｢…やっぱりか。｣
あれから硝子と別れ、Aと共に家に帰る途中、難しい表情でそう言った彼女。
頭の片隅にあった考えを中心へと寄せる。
悠仁は反転術式が使えない。にも関わらず完治していた胸の傷と戻った心臓。
治したのは宿儺であると考えるのが妥当だろう。
然し、だ__
｢宿儺が何のメリットも無く悠仁を生き返らせるなんて事は、どう考えても有り得ないわ。｣
彼女の言う通り、宿儺が無償で悠仁を生き返らせるなんて事は天地がひっくり返っても無いだろう。
必ずそこに、縛りを提示している筈なのだ。
｢でも、宿儺の事だ__｣
｢ええ、間違いなく悠仁に『縛りの事を忘れろ』という条件をつけている筈よ。…悠仁に何を聞いても、何も覚えてないで終わりでしょうね。｣
試しに今度聞いてみればいいと言った彼女の意見に賛同し、何を考えても結論の出ないこの話題は此処で終わらせる事にした。
次に出た話題は悠仁のこれからの修行についてと、恵と野薔薇の事だった。
僕らは悠仁が生きていると言う事を知っているが、彼等はそうでは無い。
同級生が亡くなったという偽報を胸に、交流会迄の生活を送らなければならない。
｢大丈夫、恵と野薔薇のメンタルケアは任せて悟は悠仁の修行に徹底して付き合ってあげて？…今年の交流会迄の特訓は、私が担当するから。時間があればそっちにも顔を出すわ。｣
｢ああ、助かるよ。シゴいてやってくれ。｣
任せなさいと妖しげに口角を上げた彼女を見て、恵と野薔薇にご愁傷様と手を合わせた。
彼女は同級生が死んだからといって傷心期間を与える様な甘い女では無い。
勿論、恵と野薔薇もいつまでも友人の死に囚われ足を止めるような子達では無いのも理解している。
｢あの子達とならきっと、この腐った呪術界を壊せる。｣
｢…ああ、変革だ。殺ってやろうぜ、A。｣
雨上がり、湿るアスファルトに蜃気楼が揺れる中__
僕らはまだ見ぬ未来に希望を抱き、一歩を踏み出した。
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作者名：HamA | 作成日時：2020年10月20日 21時
