鬼神 (ページ1)

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prologue 1. ページ1

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__二〇〇六年

噎(む)せ返る様な血の臭いと、床に転がる肉塊。

目の前には、刀を手にした、左眼を淀んだ赤色に染めた父だった(・・・)何か。

『死』という物が目前に有るというのに、齢十歳の私は異常な程冷静だった。

【泣かないのだな、童(わっぱ)。】

｢悲しく、無いから。｣

父の声では無い、何かの問い掛けにそう応えれば、不気味な迄に愉快そうな笑い声が部屋に響いた。

何が、可笑しいのか。

小さく首を傾げた私に、涙を浮かべる程笑い明かした目の前の何かが、私の前にしゃがみ込んだ。

【童、気に入った。】

不気味な笑顔を浮かべながらそう口にした瞬間、顔に飛び散る父の血と、左眼に感じる熱。

その熱は次第に痛みへと変わり、あまりの激痛に左眼を抑え蹲る。

直後、心臓が大きく波打ち、何かに身体を乗っ取られて行く様な、不思議な感覚がした。

けれど、そんな感覚も次第に落ち着いて行き、頭の中に先程迄会話をしていた相手の声が鳴り響く。

【まさか、制御されるとはな。…まあいい。豊潤な呪力、若い身体、先程の男より居心地が良い。】

｢…貴方は、誰？｣

頭の中で声が聞こえるだなんて、初めての経験に目を見開きながらも、声の主にそう問い掛ける。

頭の中で、またも笑い声を上げながら声の主は私の問いに応えた。

【お前らが大好きな___だよ。】

そう、応えを聞いた直後。

この凄惨な部屋の襖が勢い良く開かれ、長身の丸いサングラスを掛けた男の人が私の前に現れた。

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