あ ろっと おぶ…らぶ ▽１

信号　(回想Hk/Ym) ページ3

青は進め、赤は止まれ。

青が点滅してる時は赤に変わる合図だから、注意して渡ろうね？



…なんて、誰もが小さい時に教えられる歩行者信号の渡り方。

それをしっかり守って、手を上げて横断歩道渡ったりして。


だけど、気付くんだ。



『あ、変わっちゃったけど…まぁいっか』

『点滅してる！走れ走れ！』

『誰も来ねーじゃん、渡ろうぜ？』



そうやって、中学生にもなれば、
歩行者信号なんてものは、手を上げながら気をつけて渡るものじゃなくなってくる。


慌てて左右の確認もせずに駆け込んだり、
赤信号でも、誰もいなきゃ渡っちゃうし、
そこに、危険とかルールとか、そういうものはなくなってくるんだ。



でも、俺は。




・




・




「いそげ、いそげ！」

「きゃははっ、赤になっちゃったー！」

「わ、車来た！あははっ、あっぶねー！」


「おいおい、まじかよ…どこの小学生だ？」



赤になった信号を無視して、友達同士で騒ぎながら横断歩道を渡る小学生たち。

車の運転手さんも相手が小学校低学年だってわかってて、
気をつけて運転してくれてたけど、そうじゃなかったらどうするんだよ。


あんなの、学童の奴らがやったら、一発でおしおきだ。



ため息をつきつき、俺は駅の駐輪場から出て自転車を漕ぎだした。


…昔、まだ俺が学童に行ってた頃。
下校途中の信号無視とか交通ルールのことで、俺はよく叱られていた。



「怖いんだよな、先生」



下校中だからってふざけてると、
そういう時に限って買い出しに出てた先生と出くわしたりするんだ。


もちろん、先生も俺の行く先も学童クラブ【ひまわり】



『涼介！おまえは何回言ったら…！』


ばちんっばちんっ


『車にひかれたらどうすんだ！』


ばちんっばちんっ




・





・





ひかる先生は優しいけど、怒ったらすごく怖かった。

でも、俺みたいなヤンチャなガキを、先生は見捨てなかった。


何度も交通ルールを守らずに危ない真似する俺を、その度に膝に乗せて。
命を大切にしろ、人に迷惑かけるなって、学ばない俺に何度も同じ事を言ってくれた。



「っと、…あ、やべー…」



余裕で渡れると思ってたのに、横断歩道に差し掛かったところで信号が赤になった。


大体の人は気にしない。だけど、俺は。



「先生、いないよね…？」



止まってくれた車にお辞儀をして、立ち漕ぎして渡りきった横断歩道。

こんな時いつも俺は、先生に見つかったらおしおきだな、なんて思うんだ。

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