F#7 ツンデレちゃんはいつだって。

・ライバルとは思いたくない ページ8

*


　


バスに乗ってふぅと一息つく。
スマホには先程交換したばかりの成瀬Aの文字が映し出されている。





最初は遥輝さんの彼女とばかり思っていたからかなりビックリした。


遥輝さんに告白されて断るヤツなんておるんやな、


そう考えていたが、成瀬さんの対応を見てなんとなく納得できた。




結構話しづらそう、と思っていたのだが、意外とそうでもなかった。



単純に遥輝さんのことを応援しようと思って呼び止めたのだが、
あのあと連絡先を交換したのは多分、というか、絶対に違う理由だ。


あの時、遥輝さんのことを話したことを思い出すと、何故か胸がチクチクとする。




突然、持っていたスマホが振動した。
それは成瀬さんからのLINEであって、

よろしくお願いします、という文と共に、可愛らしい熊がペコリとお辞儀をしているスタンプが送られてきていた。


あのクールというか、冷淡というか、そんな成瀬さんからは想像もできないような可愛いスタンプに思わずクスッと笑ってしまう。

俺もお返しに、坂本さんのイラストが描かれたスタンプを送った。このスタンプにした理由は特にはないのだが。







あの成瀬さんのふわっと笑った顔が頭から離れないでいる。





ふと思い立って、
成瀬さんとLINE交換しました、と遥輝さんに送ろうとしてしまったりするほど。




なにしてるんや、俺。
成瀬さんは遥輝さんの好きな人なのに、





成瀬さんの前で遥輝さんを誉めてことを後悔してしまったり、遥輝さんを挑発するようなLINEを送ろうとしてしまったり、



そんな自分の行動に嫌気がさして、
自分の気持ちに蓋をするように目を閉じた。






外では、ひたすらに雨が降っている。


いつもの明るい札幌の街は見ることができなかった。



瞼を落とすと、その雨が窓を叩きつける音だけが聞こえる。




　






俺は、この感情は遥輝さんのと同じものではない、と言い聞かせ続けていた。
*

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