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顔が真っ赤なAさんを見ると、
また熱が上がったのか?と心配になってしまうわけで。
もう一度彼女の額に手を当てた。
すると、何故かAさんは強く目を瞑りだす。
そんな姿を可愛いと思っている自分がいたことは、もっと不思議なのだが。
「良かった、上がったわけじゃなさそうですね。これ、飲んでください」
伝わる熱は決して高いものではなかったので、安心する。
持っていた薬を渡したら、Aさんは素直に受け取ってくれた。
・
ふと、棚の上に飾ってあった写真に目が留まる。
近寄って見てみると、そこには笑顔でピースをするAさんと少年。その様子は、どこかあどけなくて可愛らしい。
二人ともユニフォームを着ていることから、恐らく学生時代のものだろう。
「これ、高校のときのAさんですか?」
この後のことなんて考えず、気軽な気持ちで質問してしまう俺。
振り返ってみると、
Aさんは目を見開いて驚いたような表情をしていた。
当然、
しまった、と思うには時間がかからない。
同時に、いつか同じような感覚になったことを思い出す。
(・・・そうだ、一緒に飲みに言った時だ。ソフトボールを止めたという話をした時)
またもや、空気の読めない発言をしてしまい、後悔の渦がぐるぐると。
「すみません、今の忘れていいです」
流れる沈黙が気まずくて、失敗を取り消すかのように俺は呟いた。
「・・・いえ、そうです。高校の時の写真です」
だが、Aさんはゆっくり首を振って、小さくはにかみながら俺のもとへ歩いてきた。
彼女は写真を手にとって、愛おしそうにそれを眺めながら口を開く。
「私、前イップスになったからソフトボール止めたって話しましたよね?」
「はい、」
「・・・その話、半分本当で半分嘘です」
しっかりとそう言葉を紡ぎ出すAさん。そこから迷いとかそういうものは一切感じられない。
「石川さんからしたら、どうでも良いことかもしれないですけど.....聞いてくれますか?」
Aさんは微笑みながら言う。
その表情は笑っているのだが、どこか辛そうで悲しそうだった。
そんなAさんを見て、俺も小さく頷いた。
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梓(プロフ) - 如月明日香さん» ありがとうございますー!如月さんのコメントはどれも嬉しいものばかりですよ(_ _)ちょくのことが好きになってくれたのなら嬉しいです(笑)最後まで読んでくださりありがとうございました! (2017年12月5日 17時) (レス) id: 884c868c1e (このIDを非表示/違反報告)
梓(プロフ) - 雛*さん» ありがとうございます!そう言ってもらえると凄く嬉しいです(^^;番外編の方もよろしくお願いします! (2017年12月5日 17時) (レス) id: 884c868c1e (このIDを非表示/違反報告)
如月明日香(プロフ) - 完結〜〜!おめでとうございます! このお話で私は石川選手が好きになり、なんと実際に石川選手のタオルも買ったんです〜〜! それくらい、引き込まれる作品で、石川選手の魅力が詰まったお話でしたっ! 本当にこのお話大好きです!! 本当におめでとうございます! (2017年12月5日 0時) (レス) id: eed9e6c20a (このIDを非表示/違反報告)
雛*(プロフ) - はぁ……完結お疲れ様でした(;;) 終始ニヤニヤしっぱなしでした……´`* 素敵なお話をありがとうございました〜〜!! 番外編も楽しみにしてます◎ (2017年12月5日 0時) (レス) id: cd2200b77f (このIDを非表示/違反報告)
雛*(プロフ) - わ、わ、わ…! ほんとですか(;;) ふ、ファンだなんて恐れ多いです;;ありがとうございます´`* ちょくくんファンなので、ちょくくんの作品があるのが嬉しくて…!*゚ これからも楽しみにしてますね〜◎ (2017年12月1日 14時) (レス) id: cd2200b77f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梓 | 作成日時:2017年10月14日 17時