#29 ページ30
*
「・・・んっ、」
パチッと目が覚める。
さっきまで容赦なく襲っていたダルさは幾分良くなっていた。
「あれ？」
意識がだんだんはっきりしてくると、額に何か乗っていることがわかる。
それは濡れたタオルであって。
え？なんで？
誰か来たの？
周りを見渡してみても誰もいない。
けれど、扉の奥で水が流れている音が聞こえてくる。キッチンであろう場所から。
「あーっ、そっか。宮下さんかな？」
多分そうだ。このことを知っているのは宮下さんだけだから。
それなら礼を言わなくては、と立ち上がる私。
そんな私は、この後絶句するのであった。
「えっ、・・・なんで石川さんが？！」
宮下さんだと思い込んでいた私は当然パニック状態。
そんな石川さんはキッチンに立ってカチャカチャと洗い物。
「あ、すみません。何か手伝いでもした方がいいかなと思って」
熱下がりました？とこちらに歩み寄ってくる。
訳が分からない私は、ただただそこに突っ立っていて。
ヒヤッという感触と共に、目の前には石川さんの顔。
つまりは、石川さんが私の額に手を当て、膝を曲げて目線を合わせている、という状況。
「良かった、大分下がりましたね」
そう微笑む石川さん。
一方の私は顔に熱が集まっていて。
これじゃ下がった意味ないだろ！なんて考えたり。
「薬は・・・飲んでないですよね？」
「あっ、はい！・・・飲んでないです」
「どこにありますか？」
「えっと、それならあの辺に、」
棚のある方へ取りに行こうとしたのだが、
「いや、良いですよ。俺取ります。Aさんは座っててください」
と、促される。
体をソファーに沈め、ようやく状況を一から整理。
・・・とりあえず、理由はよく分からないけど石川さんがお見舞いに来てくれて、
そう、お見舞いに。
石川さんが。
・・・え？石川さんが！？
(どうしよう！？石川さんが私の家に上がってる！)
やばいよっ、
髪ボサボサだしっ！どうでもいいスウェット着ちゃってるしっ！
なによりノーメイク！
「大丈夫ですか？なんか顔赤くなってますけど...」
水が入ったコップと薬を手にした石川さんが、不思議そうな顔をしている。
「もしかして熱上がってきました？」
そう言って私の隣に座り、また私の額へと手を伸ばす。
もう、とにかく恥ずかしくて、
私は目をギュッと瞑ってしまった。
けれど、
石川さんの手、冷たくて気持ちいい、なんてどこか冷静な自分もいた。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 210人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
梓(プロフ) - 如月明日香さん» ありがとうございますー！如月さんのコメントはどれも嬉しいものばかりですよ(_ _)ちょくのことが好きになってくれたのなら嬉しいです(笑)最後まで読んでくださりありがとうございました！ (2017年12月5日 17時) (
レス) id: 884c868c1e (このIDを非表示/違反報告)
梓(プロフ) - 雛*さん» ありがとうございます！そう言ってもらえると凄く嬉しいです(^^;番外編の方もよろしくお願いします！ (2017年12月5日 17時) (レス) id: 884c868c1e (このIDを非表示/違反報告)
如月明日香(プロフ) - 完結〜〜！おめでとうございます！ このお話で私は石川選手が好きになり、なんと実際に石川選手のタオルも買ったんです〜〜！ それくらい、引き込まれる作品で、石川選手の魅力が詰まったお話でしたっ！ 本当にこのお話大好きです！！ 本当におめでとうございます！ (2017年12月5日 0時) (レス) id: eed9e6c20a (このIDを非表示/違反報告)
雛*(プロフ) - はぁ……完結お疲れ様でした(；；) 終始ニヤニヤしっぱなしでした……´`* 素敵なお話をありがとうございました〜〜！！ 番外編も楽しみにしてます◎ (2017年12月5日 0時) (レス) id: cd2200b77f (このIDを非表示/違反報告)
雛*(プロフ) - わ、わ、わ…！ ほんとですか(；；) ふ、ファンだなんて恐れ多いです；；ありがとうございます´`* ちょくくんファンなので、ちょくくんの作品があるのが嬉しくて…！*ﾟ これからも楽しみにしてますね〜◎ (2017年12月1日 14時) (レス) id: cd2200b77f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：梓 | 作成日時：2017年10月14日 17時
