【川西賢志郎】キレイな心。 (ページ9)

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重なったモノページ9

「うわー、最悪。これや」

プンプンと匂い付く車内。

キレイな彼女の匂いに少し似ている気もしたが、こういう時に限ってイヤな予感は当たる。

嘆く俺の視線の先には水田が落としていったであろうミストの蓋が見えた。

「どうしたんですか？何かこぼれてたとかですか？」

心配そうにこちらを振り返るAちゃん。

案の定、彼女の言った通りミストの液体は漏れていた。

「ハハッ、ミストが溢れてたみたいでな...」

「フフッ」

申し訳なさそうにした俺の言葉をかき消すように彼女が少し笑った。

「川西さんもミストってつけるんですね！」

Aちゃんは、匂いなんて１つも気にならないような面持ち。

「あ、違うねん。これ水田の！今日楽屋で落としてあったん拾ったんや」

「へぇ～！水田さんがミストってなんだか似合う！」

「え、俺は？」

「川西さんは気にしてなさそうです、フフッ」

「なんでや！俺だって結構女子力高いんやで」

「うっそだ～」

少し小悪魔な目が俺を見る。

小さなことですらキュンとした。

「にしても水田はこんなミスト使ってんのか、絶対女の子用やん、ベローミストって」

「え？！」

彼女はクシャっとなる笑顔とは反対に冷静な顔をした。

「え、どうしたん？」

何に驚いているのか分からない俺は素直に聞き返した。

「ちょっとミスト見してもらっていいですか？」

よほど高いブランドのミストなのだろうか、

人気すぎてどこもかしこも売り切れなのに水田が持っていることに驚いたとか？

頭に過ることはたくさんあったが、とりあえず漏れきったミストの空き瓶をAちゃんに渡した。

「わ～！ベローミストだ！これうちの商品なんです！」

「うちの商品？」

頭に過るのは不思議なことばかりで整理がつかなった。