【川西賢志郎】キレイな心。 (ページ8)

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車内の香りページ8

「あ～！！キレイ！」

彼女がキレイで細長い手をドアにピタリとつけ俺が言った夜景を見ていた。

「せやろ？このために遠回りする気持ち、わかる？」

「はい！私もこの夜景なら毎日遠回りしたくなっちゃいます」

はしゃぐ無邪気な彼女ほど可愛い女の子、俺は知らない。

ピピーッ。俺が。いや、俺たちが降りる駅になった。

ここやで、と降りることを促し俺についてくる彼女。

「ここの街知らなかった～！ここの夜景もキレイ！」

沈黙を作らそうとしないのか、たくさん自分の感情を顕にしてくれる。

改札を出て、少し歩き俺の自宅に到着した。

「車、出すからちょっと待っててな」

「はい！すいません本当」

どれだけはしゃいでいても送ることになると毎回、律儀な謝罪をしてくる。

こうゆうところに育った環境の良さを感じる。

「はい、ちょっと汚いけど乗ってや」

「ありがとうございます！」と、助手席に乗ってすぐシートベルトをしていた。

少し大胆な行動に俺の胸はかき乱される。

車で３０分ほどの道も、たわいもない会話で盛り上がれた。

「あ、今更やけど名前聞いてええかな？俺は...」

「川西さん...？」

「え？！なんで知ってるん？」

思いもよらない彼女の言動に俺は驚きを隠せなかった。

「やっぱり！和牛の川西さんですよね？初めの時から思ってましたけど、電車結構人多かったしバレちゃいけないかなって思ってなかなか言えなくて」

どこまで律儀で気を遣える子なんだろう、そう思った気持ちが口に出そうになった。

「そうやで！なんや、全然知られてへんと思ったから言わんかったけど良かった～」

「本物の川西さんだと思うとちょっと恥ずかしいです。私はAです。」

「Aちゃんか..可愛い名前やな。」

最初からずっと欲しかったものを手に入れた気分だった。

すると、車内から尋常じゃない甘い香りがした。

彼女が横にいるからか、と考えたがそんな仄かな香りではない。

「なあ？なんかすごいツンとするような匂いせえへん？」

「ん～そう言われたら確かにするような」

「ちょっと一旦、車停めてもええ？」

コクリと頷く彼女を横に俺は車の後ろに置いてある自分のバッグの中身をみた。

「うわー、最悪。これや」