【川西賢志郎】キレイな心。 (ページ12)

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会いに行くまでページ12

「今日の収録思ったよりウケてたな！」

水田が嬉しそうに手応えがあったことを教えてくれる。

「せやな！お客さんも結構笑ってたし」

「今日調子でてるわ、この調子のままライムレーン行くで！」

楽屋を出る準備をそそくさとし始める水田。

ん？これもしかして俺のためってよりは、ただ単に美女みたいだけじゃ？

「お前、協力してくれるのは有り難いけど美女みたいだけやろ」

確信した俺は少しニヤつかせながら聞いた。

「失礼な！２割はちゃんとお前のためや！あと８割は美女目当てなだけや」

ビンゴだった。その２割、確実に美女探すための言い訳やん。

なんだかんだ言いながらも付いてきてくれる水田に感謝してひさしぶりに

俺ら２人揃って楽屋を出た。

局から１駅という近さにライムレーンがあるらしく、俺の緊張は１駅だけじゃ収まらない。

足を進める速さと表情と心臓の速さ、全て一致していない。

急に行って嫌われるんじゃないか、そもそもAちゃん出勤じゃなかったら。

いつにも増して下向きな考えが次々と出てくる。

もしいたら何を話そう、何を買いにきたって言おう、俺もベローミスト買いにきたって言ったら
引くかな。

まず、もしいなかったとしたら...

「なあ！緊張してるんやろ！大丈夫やって！上手いことできるやろ！」

俺の考えを塞いでくるかのように肩をポンと叩いてきた。

相方の何気ない言葉は誰よりも心に響く。まあ、８割美女目当てやけど。

緊張が緩和してきた俺は堂々とした表情でいつも帰る方向の逆の電車に乗った。

乗った瞬間に女性が俯いて立っていた。

あの瞬間のような甘い香りやときめきや心臓の高鳴りはしなかったが、

Aちゃんに初めて会ったときのことを思い出した。

儚くてキレイで。どこから出ているのか分からない惹きつけるオーラ。

喋ってみないと分からない無邪気な姿さえ、まだ見ていなかったあの日。

初めてのことで戸惑って次の日、すぐに水田に相談して背中押してもらったっけな。

電車に乗ると、すぐにあの懐かしさをどこかで欲している俺。

緊張する心を他所にそんなことを思っていると

ピピーッ。とうとう電車が開いた。