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「……御主は!」
「し、時雨様!この御方からご指名が」
「で、何両出せばいいんだ?」
その小柄さに似合わない強い雰囲気と面持ちで支配人に向かって金を出す。袴の袖からはこれでもかという程の金銭が出てくるので、周りの人々は目を丸くする。
「引き受けます。他の者は下がって良い。」
そう言うと、「しょ、承知致しました」と他の支配人たちは一歩後ろへ下がり、その姿を確認した後、禿を引き連れて待合茶屋へと向かう。
引き受けたのはお金が欲しいからではない。
この身を借金を返すために売ったのだから、もうお金は必要が無い。
常連の客の夜を相手にするには、私の身体が今日はさすがにもたないと思ったからだ。
「貴方は何者?」
「俺?…杵築の人間だけど」
キョトンと話す様子からはどうも自分の國がどれほど大きいものか分かっていないようだ。
杵築といえば噂によく聞く大きな國だ。
いつ天下統一してもおかしくない……だとか。
これから、初会が始まる。
今夜は、主と寝る必要がないため久しぶりに身体を休められそう……自然と顔が綻んだ。
「それでは、私はこれで失礼します」
付き人の禿が出て行ったのを確認し、主に向き合う。しかし当の本人は、私に興味がないように爪を弄っている。……いつもの客とは、違う。
少しだけ警戒心を高め、話しかけた。
「御主、名前は?」
「うらた」
「私は、……ご存知だと思いますが伊織時雨と申します」
「へぇ、時雨、ね」
うらたさんは、怪しくニヤリと笑った。
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吉原遊廓のきまり
吉原でお目当ての遊女が見つかったら、三回通う必要があった。
始めて登楼する「初会」、二度目の「裏」、三度目の「馴染み」でようやく馴染み客になることができる。
この三度目で、客は、「遊女が気に入ったので長く通う」という意味を込めて、馴染み金を出すシステムになっている。
初回・裏では身体を重ねることは許されない。
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透(プロフ) - 牡丹一華。@坂田家さん» はじめまして。ありがとうございます…!そのお言葉が一番の褒め言葉です( ; ; )ご期待に添えるよう執筆頑張りますね◎ぜひこれからも読んでくださると嬉しいです!よろしくお願い致します (2020年1月11日 8時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
牡丹一華。@坂田家 - 夜分遅くに失礼します。作品を読ませていただきました。この作品のページが進めば進むほどのめり込みました。続編も読ませていただきますね。 (2020年1月11日 4時) (レス) id: ca03128f9d (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - 舶(ハク)@月ノ山天文部さん» ありがとうございます!!書き方いろいろ工夫しながら書いてるので褒めてもらえてめちゃくちゃ嬉しいです(///)更新頑張りますね!これからもよろしくお願い致します!! (2019年5月16日 23時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
舶(ハク)@月ノ山天文部(プロフ) - 誤字すみません……すごきではなくすごくです…… (2019年5月15日 1時) (レス) id: 7017cc79b6 (このIDを非表示/違反報告)
舶(ハク)@月ノ山天文部(プロフ) - お話すごく好きです!うらたさんかっこいい……更新楽しみに待っています、頑張ってください!あと書き方すごき上手くてとても読みやすいです(*´ω`*) (2019年5月15日 1時) (レス) id: 7017cc79b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:透 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2019年4月27日 0時