百花繚乱恋セヨ乙女【浦島坂田船】

＊ ページ21

久しぶりに休暇が与えられた。
吉原を去る前の手続きのための休暇だ。


馴染みの客に対する手紙を書き、着物を全て剥がれ袴一枚に身を包み、私目当てに来て下さる客に支配人が事情を話す隣でじっと耐える。


もうこれほど重くて私の体には勿体ないくらいの高級な着物を着る必要もない。頂き物の簪で髪を結わなくても良い。



それが、幸せなはずだった。




遊女たちの苦しみと快感に浸る声で溢れかえる中、私はまた違う苦しみに襲われる。



結局どこへ行っても私は道具だ。
吉原遊廓の、父上の＿＿＿＿＿＿＿＿


私の身体さえあれば問題ないのでしょう？




私を鳥籠に閉じ込めた大嫌いな父上によって再び鳥籠から飛び立てられる。

……違う。もっともっと狭い鳥籠に閉じ込められる。





「文(ふみ)はすべて書けたか？」


「はい」




私の身体を求めて吉原(ここ)へやって来た客へ向けた十数枚にも及ぶ手紙。

その束を手渡す。




「お主のような大事な商売道具を失うのも辛いもんだな」



「……そうですか」






あぁ、こんなことになるなら死んでもいい。

勝手なことをしたら殺されるのはわかっている。私は自由の効かない捕らわれた囚人同様だということも承知している。

だけど、ただの道具として一生を終えるくらいならば








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全てから逃げ出そう。




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