（弐）有終完美 ページ10
城への攻め込みが成功した時点で俺らの勝ちは確定したようなものだった。
杵築に戻り、相手が白旗を掲げるのを待つだけ。
香流の城で負った傷は、Aによって手当されしっかりと包帯が巻かれている。これまでお互いに治療してきたのとは違い丁寧に巻かれたソレを見て安堵の息を漏らす。
うらたんも坂田もまーしぃもほんまに手当がヘッタクソで俺が4人分していた数週間前が既に懐かしい。あの頃のAを失った虚無感は消え、今は自信で満ち溢れている。
「香流の城は杵築軍が占拠した！
いい加減諦めたらどうだ？」
「……兄妹揃って親不孝者め！！」
その大声に思わず肩を揺らしぎゅっと目を瞑ったAの耳に手を当てて音を遮断する。
気に病んでしまっては可哀想だ。
いつもなら城の離で待機させていたAだが、今は一緒になって見張り台へ上っている。(もちろん戦闘が始まれば城の中へ戻ってもらうつもりだが)
「そこにいるのはAだな。
おいおい、真冬はどうした？
父親を裏切って自らの國を捨て居場所をも失った哀れな兄はどこへ行った！！」
「居場所がねぇのはてめぇの方だよ」
低くどす黒い感情に塗れたうらたんの声が響く。
もう決着は着いたようなもんやのに最後まで粘るなぁ…と俺も坂田もまーしぃも苦笑い。
「さっさと白旗をあげろ！
まだ戦を続けても戦死者を増やすばかりだ！！
さっさとお前の首を切って戦を終わらせろ！」
Aは、首を切ることにどう思うだろう。
どれだけ酷い扱いを受けてきたとはいえ一応は肉親だ。この世に二人しか残っていない血の繋がった家族だ。
うらたんの言葉を聞き、Aが俺の袴の裾をぎゅっと握ったのがわかった。無意識だろう。
香流の長女として育ち吉原に売られ花魁という最高地位で働き生きてきた彼女には、この無残な戦争跡だけでも胸が苦しくなるに決まってる。
人が血を流す姿など見たことがなくてもおかしくはない。
そんな彼女が、ぽつりと一言呟いた。
「父を、…殺さないでください」
「…！！」
Aの目には涙が浮かび、ほんのり桃色に染った頬を伝ってどんどん流れてゆく。
「我儘なのは、わかってます…
ただ、首ははねないであげてください、お願いします…ｯ」
うらたんの羽織を握り、頭を下げてそう言った。
それを見たうらたんは、少しだけ表情を緩ませた。
「よく言った」
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湊 - 更新停止中だと！？めっちゃ面白いし、ハラハラします！！続き気になります！！！ (2021年3月10日 16時) (
レス) id: e6fd04cefe (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - みいさん» ありがとうございます！無事終了して私もほっとしてます(笑)応援ありがとうございます！今後ともよろしくお願い致します◎ (2020年12月6日 9時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - ちょこさん» お返事遅くなってしまい申し訳ございません。私事ではございますが今年大学受験を控えていたため更新お休みさせて頂いていました。先日無事終了しましたのでまた徐々にではございますが更新再開予定です。今後ともよろしくお願い致します！ (2020年12月6日 9時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - 紅灯-あかり-＠crewさん» お返事遅くなってしまい申し訳ございません。ほんと個人的な事情なのですが、大学受験を控えていたため更新お休みさせて頂いていました。先日無事終了しましたのでこれからまた更新再開していく予定です◎改めまして今後ともよろしくお願い致します！ (2020年12月6日 9時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
みい - 受験でしたか…！お疲れ様です。更新頑張ってください！。 (2020年12月6日 9時) (レス) id: fd64c2f6dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：透 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時：2019年11月29日 16時
