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まだ血臭いその部屋で、栗花落真冬はこちらに背を向けて回り廊下に腰掛けていた。襖を開ける音を耳にした彼は、待ちわびていたかのようにこちらを振り返る。
「来てくれると思ってました」
そう言って小さく微笑んだその表情はやはりどこかAと似ていて、それすらにも内心で暗い炎を燃やしている自分がいる。
今夜には香流を出てそろそろ戦に決着をつけなければならない。それまでに彼に聞くべきことは多くある。
「聞きに来たんですよね、Aのこと」
「あぁ。それから……お前のことも」
「真冬でいいですよ」
高く澄んだ声が優しい口元に薄笑いを見せる。
妹を救うために父親を裏切り故郷を捨て、これからの未来に少なくとも光は見えていないはずの彼は、なぜこうも唇を綻ばすことができるのか。
「僕に語れることは何もないです。
気がついたら、Aはいませんでした。
吉原に売られたことは、僕の初戦の時に父から聞かされました。」
淡々と話すのを、俺は頷くことも無くただ黙って聞いていた。
「昔一度、花魁道中でAを見かけたとき、思わず父を呼び止めても父は無視してAに背を向けた。
その時のAは僕が知っているAじゃなくて、人が違ったようで思わず目を逸らしちゃったんです。
それから数年して、Aを買い戻そうと思っていると聞かされて何かおかしいと思っていたらやっぱり父はAを道具としか見てなくて、」
目を伏せ、その手が袴の裾を悔しそうに握った。
「戦にはきっと負ける。
こんなバラバラな國が勝てるわけないんだ。」
「でも、これからどうする気だ？」
「僕？
もう
……Aとは、今日限りで会わないつもり。」
心の中で薄々感じはしていたが、やはり今日でAの兄は兄としての役目を終え姿を眩ませるらしい。
「Aは吉原で、僕と母の訃報を聞かされていたらしい。だからきっと、僕がいなくても生きていける」
「Aの母親は？」
「……死んだよ、Aが吉原に売られてすぐに体を壊して。Aに謝りながら死んでいった」
神様がAに微笑むことはなかった。
彼女がこの世に生を受けてからこれまで、壮絶な人生を歩ませたにも関わらず結局孤独なままだった。
「もう、Aは十分苦しんだ。
だから…うらたさんたちで、Aに幸せを分けてあげて欲しいんです」
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湊 - 更新停止中だと！？めっちゃ面白いし、ハラハラします！！続き気になります！！！ (2021年3月10日 16時) (
レス) id: e6fd04cefe (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - みいさん» ありがとうございます！無事終了して私もほっとしてます(笑)応援ありがとうございます！今後ともよろしくお願い致します◎ (2020年12月6日 9時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - ちょこさん» お返事遅くなってしまい申し訳ございません。私事ではございますが今年大学受験を控えていたため更新お休みさせて頂いていました。先日無事終了しましたのでまた徐々にではございますが更新再開予定です。今後ともよろしくお願い致します！ (2020年12月6日 9時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - 紅灯-あかり-＠crewさん» お返事遅くなってしまい申し訳ございません。ほんと個人的な事情なのですが、大学受験を控えていたため更新お休みさせて頂いていました。先日無事終了しましたのでこれからまた更新再開していく予定です◎改めまして今後ともよろしくお願い致します！ (2020年12月6日 9時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
みい - 受験でしたか…！お疲れ様です。更新頑張ってください！。 (2020年12月6日 9時) (レス) id: fd64c2f6dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：透 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時：2019年11月29日 16時
