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香流に行くことだけを父上に伝え、まだ暗く寒い早朝に俺らは馬に跨った。
杵築に残れと言ったが、坂田が襲われたのは自分のせいだと思っているのか一緒に行くと言って聞かなかった。
そんなAは今、俺の背中に身体を預けるようにして小さく寝息を立てている。着物越しにAの体温を感じ、手綱を持つ手に力が入る。
「A落としたらあかんで？まーしぃ、」
「落とさんわ。てか四人の中やと俺が一番安全運転やろ」
「坂田は荒いもんなーあいつ」
今から敵陣の城に乗り込むとは思えないような呑気な会話を交わしながら、夜明け前の風を切る。
安心したように眠るAの頭にそっと触れて、それ以上の感情を押し殺すように手綱を引く。
俺は、うらたさんみたいに誠実じゃないし坂田みたいに素直でもなければセンラみたいに頭が良い訳でもない。
女相手は慣れている。が、好きな女は別だ。
もしかすると一番不器用なのではないか。
今まできつく蓋をしていたはずの敵国の姫に対する淡い感情が隙間から溢れようとしているのは自分でもわかっている。
その理由が、他三人のAへの感情だということも。
一人の
「あれか、」
うらたさんの声に、足を止める。
傍から見ると何の変哲もない穏やかな城とそのまわりに広がる賑わいに充ちた城下町。
その頃には、陽は昇りAも目を覚ましていた。
Aの顔は、父親が街中に散らした似顔絵で知られているためすれ違う人の中にはAの姿を見てコソコソと何かを話す人もいる。
それを見る度表情を暗くするAの頭を、そっと撫でる。
「Aは、見つからない場所にいろ」
「嫌です、…ひとりにしないでください」
弱々しくそう発したAの頭を抱くように片手を回しポンポンと優しく落ち着かせるように手を動かすうらたさんに、俺の中には醜い嫉妬心が沸いた。
(全部俺のものにしたい…)
女遊びをする度、そういうのに全く興味がないうらたさんに「狂ってんなぁ」と笑われていたが、今思えばあんなの大したことじゃない。
俺の、Aのすべてを自分のものにしたいという深くどす黒い愛の方が狂っている。
「ここは、お前が嫌う故郷だ。
いつ捕まっていつ売られるかわからない。
……言いたいこと、わかるな？」
Aは答えず、目を伏せた。
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湊 - 更新停止中だと！？めっちゃ面白いし、ハラハラします！！続き気になります！！！ (2021年3月10日 16時) (
レス) id: e6fd04cefe (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - みいさん» ありがとうございます！無事終了して私もほっとしてます(笑)応援ありがとうございます！今後ともよろしくお願い致します◎ (2020年12月6日 9時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - ちょこさん» お返事遅くなってしまい申し訳ございません。私事ではございますが今年大学受験を控えていたため更新お休みさせて頂いていました。先日無事終了しましたのでまた徐々にではございますが更新再開予定です。今後ともよろしくお願い致します！ (2020年12月6日 9時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - 紅灯-あかり-＠crewさん» お返事遅くなってしまい申し訳ございません。ほんと個人的な事情なのですが、大学受験を控えていたため更新お休みさせて頂いていました。先日無事終了しましたのでこれからまた更新再開していく予定です◎改めまして今後ともよろしくお願い致します！ (2020年12月6日 9時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
みい - 受験でしたか…！お疲れ様です。更新頑張ってください！。 (2020年12月6日 9時) (レス) id: fd64c2f6dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：透 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時：2019年11月29日 16時
