＊ ページ12
「Aー！おはよう！」
「わっ…！」
相変わらず可愛くない反応だなと我ながらつくづく思う。後ろから明るい声でふわりと抱きついてきた坂田さんに少しよろめくも、彼の鍛えられた腕で咄嗟に支えられる。
坂田さんは、まだ寝巻き姿で走ってきたのだろう、胸元が少しはだけて目のやり場に困る私。
出会いたての時よりも増えた傷に少し心が痛くなる。
『Aが好きやから…じゃあかん？』
その"好き"が特別な淡い気持ちなのか、ただ素直な好意なのかはわからない。
けれど、その一言に私の心が揺さぶられているのは事実だった。
「A今日ひましてる？」
「私はずっとひまですけど…」
「じゃあ一緒に城下町行こうや！」
戦が終わり平和を取り戻した日々は、本当に時間の流れが穏やかだった。こうやって城下町に連れていってもらうことも多かったし、時々書類仕事をするうらたさんの隣で書き物をしたり。
センラさんにはたくさんの本を借りたし志麻さんや坂田さんとはよく花札をしている。
久しぶりの買い物だ…！と思い少し気持ちが高鳴り、お気に入りの着物を出す。これももちろんうらたさんたちに買ってもらったもの。
私物は全て吉原にあるため何もかも供給してもらっていてほんとうに申し訳ない……
「センラさん」
「ん？どした？」
居間で本を読んでいたセンラさんに声をかける。
普段着の緩い袴を着ていてもその美しいお顔は健在で目が麻痺してしまいそうだ。
波瀾万丈という言葉がぴったりだ…色々と。
「髪、結ってくれませんか」
髪を綺麗に結ぶだけでテンションが上がる。せっかくのお出かけだから、髪を結うのが得意なセンラさんにお願いしたい。
センラさんは本当に器用で、時々結ってもらっていた。自分で結うよりもずっと綺麗にでき上がるの。
「ええよ、おいで」
本に栞を挟み、手招きをする。
彼の足の間に腰を下ろすと、センラさんの綺麗な指が私の髪を掬った。
「どうしたん？そんな着物着て。出かけるん？」
櫛を通してもらいながら聴き心地の良い声を背に受ける。
「坂田さんと城下町に……」
「は？坂田と？」
「はい」
「やーめた」
「えっ？！」
「俺とは行ってくれへんのに坂田と行く時はこんな御粧しして行くん？」とあからさま不機嫌そうな声色。
「センラさんまた別の日行きましょう？ね？！」
「…しゃーないな」
悪戯っ子のような笑みを浮かべて、再び私の髪を掬った。
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湊 - 更新停止中だと！？めっちゃ面白いし、ハラハラします！！続き気になります！！！ (2021年3月10日 16時) (
レス) id: e6fd04cefe (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - みいさん» ありがとうございます！無事終了して私もほっとしてます(笑)応援ありがとうございます！今後ともよろしくお願い致します◎ (2020年12月6日 9時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - ちょこさん» お返事遅くなってしまい申し訳ございません。私事ではございますが今年大学受験を控えていたため更新お休みさせて頂いていました。先日無事終了しましたのでまた徐々にではございますが更新再開予定です。今後ともよろしくお願い致します！ (2020年12月6日 9時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - 紅灯-あかり-＠crewさん» お返事遅くなってしまい申し訳ございません。ほんと個人的な事情なのですが、大学受験を控えていたため更新お休みさせて頂いていました。先日無事終了しましたのでこれからまた更新再開していく予定です◎改めまして今後ともよろしくお願い致します！ (2020年12月6日 9時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
みい - 受験でしたか…！お疲れ様です。更新頑張ってください！。 (2020年12月6日 9時) (レス) id: fd64c2f6dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：透 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時：2019年11月29日 16時
