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「国木田さん、手紙が届いたンですけど…」
「手紙?誰からだ?」
「それが、差出人の名前が書いてないンですよね…」
谷崎が持っているのは、何の変哲もない白い封筒だ。差出人の名前が書いてないことだけが気になるが。国木田は手紙を受け取り、封を開ける。何枚か入っているが、最初に見たのは写真だった。
「小僧の眠っている写真?いや、何か違う気が…」
「どれです?……!敦君!これ、君のお姉さんじゃ…!」
「見せてください!!」
敦は国木田から奪うように写真を取る。写っているのは、眠っているAだ。
「これ……僕の姉さんです!A姉さんです!!それに…このベッド、病院で見たベッドじゃない…!」
「国木田君、他に入っていたのはあるかい?」
「……ああ。これだ」
入っていたのは地図と手紙。手紙と言っても、とても短い。
“十八時に地図に記した場所で待つ”
たったこれだけだ。地図を見ると、港の近く…ある倉庫街にバツのマークがつけられている。
「写真とこの手紙…。それに、倉庫街の場所からして、差出人はポートマフィアだ。写真も付けてきたってことは、恐らく敦君一人で行かないとダメだろうね」
「だが、もし向こうが何人かいたらどうする気だ。小僧はまだ戦いになれていないんだぞ」
「もちろん一人で行かせないよ?私と国木田君、与謝野先生について来てもらう。いいですよね?与謝野先生」
医務室で仕事をしていたはずの与謝野が、いつの間にか扉の前に立っていた。
「ああ。妾のせいでもあるからね…。好きなようにしてくれ」
「そのつもりです。…敦君、落ち着くんだ」
「っ…」
太宰に右腕を掴まれる。無意識に腕が虎化していたのだ。その時、誰かが入ってくる。社内の空気が変わった。
「話は聞かせてもらった」
「「「社長…」」」
「敦の身内のことか。……業務は凍結とする。上を待たせるくらいの貸しは作ってある上に、急ぐほどのものでもない」
「ありがとうございます、社長。乱歩さん、お願いがあります」
「死んでないよ、彼女」
机に足を乗せてラムネを飲んでいた江戸川乱歩が、気だるそうに太宰を見る。『超推理』をもつ乱歩は、太宰の質問が分かり、さっと答える。
「逆に大事にされているね。しばらくは安全だよ。けど、早く助けた方がいい。こっちに来なくなるよ」
「それって…」
乱歩はラムネの瓶を置く。置いた時の音は、妙に響いた気がした。
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arena(プロフ) - あかりさん» 無言参加失礼しました…。読んでいただいて光栄です!ありがとうございます! (2018年1月29日 7時) (レス) id: eb7b6b7134 (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - イベント参加ありがとうございます! すごい面白いです これからも頑張って下さい! (2018年1月29日 2時) (レス) id: 59dc504c48 (このIDを非表示/違反報告)
arena(プロフ) - ちゅうや大好きさん» ありがとうございます! (2018年1月28日 13時) (レス) id: eb7b6b7134 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅうや大好き - すごく面白いです (2018年1月28日 12時) (レス) id: 2184bb70c3 (このIDを非表示/違反報告)
arena(プロフ) - 瑠李さん» ありがとうございます。自分の作品の内容を忘れてしまう馬鹿ですが頑張ります!笑 (2018年1月22日 0時) (レス) id: eb7b6b7134 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:arena | 作成日時:2018年1月11日 21時