16 ページ19
「ん…。あれ、ここ…。一番最初に目を覚ました場所だ」
Aはゆっくりと体を起こす。頭の痛みは消えており、息苦しくも何ともない。が、気になることが一つある。
「『あつし』って…誰のこと…?」
気を失う前、確かに自分はそう呟いた。が、何をどう思って言ったのか、分からない。歪む視界の中、うっすら見えたのはもう一人の自分。なぜ、それを見てあつしと言ったのか…。
「ダメだ。何もわからない…。……ん?」
ベッドの隣にある小さな棚に、メモが置いてある。それには、綺麗な字で何か書いてあった。内容は
ー
仕事が入ってしまった。調子が良くなったら部屋に戻っていいからね
森 鴎外
ー
「森さん、忙しいのかな。また今度お礼を言おう。紅葉さんと中也さんにも、お礼を言いに行こう。紅葉さんにはドレッサーのこと、中也さんには運んでくれたこと」
ベッドを綺麗に整え、部屋を出る。黒服の男達には睨まれたような気がしたか気にしない。(気にしていたらキリがない)
二回通った(運ばれたの方が正しい)廊下なので、少しキョロキョロしながら部屋に向かう。
「確か、こっち…」
廊下を曲がった時、何かにぶつかる。
「あ、すみませ…」
「人虎…!」
「え?」
そこには、黒で身を包んだ男…いや、青年の方が正しいだろうか。異常に細い体。黒い外套は、風もないのに勝手に揺れている。温度のない目でAを睨みつけている。
「…と、思ったが…貴様は偽物か」
「ま、まあ…。えっと、貴方は…」
「
「え、えっと…」
あまりの冷たさに、Aは困惑する。そう言われては、自分が名乗る必要も無いような気がしてくる。
「念の為に聞いておく。貴様の名は」
「中島A、です。その、記憶喪失になってしまったみたいで、怪我をしているところを森さんに助けていただきました」
「名しか聞いていない。一つ、忠告をしておく。今後、僕の前にふらりと現れるな。首が飛ぶ」
「わ、わかりました…」
芥川はAの横を通り過ぎ、そのままどこかへと行ってしまう。小さな寄り合いとは聞いたが、変わった人達が多いんだなと、Aはしみじみ思った。
「と、とりあえず、部屋に行こう」
芥川のことを今はもう気にせず、Aは廊下を歩き始めた。
745人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
arena(プロフ) - あかりさん» 無言参加失礼しました…。読んでいただいて光栄です!ありがとうございます! (2018年1月29日 7時) (レス) id: eb7b6b7134 (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - イベント参加ありがとうございます! すごい面白いです これからも頑張って下さい! (2018年1月29日 2時) (レス) id: 59dc504c48 (このIDを非表示/違反報告)
arena(プロフ) - ちゅうや大好きさん» ありがとうございます! (2018年1月28日 13時) (レス) id: eb7b6b7134 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅうや大好き - すごく面白いです (2018年1月28日 12時) (レス) id: 2184bb70c3 (このIDを非表示/違反報告)
arena(プロフ) - 瑠李さん» ありがとうございます。自分の作品の内容を忘れてしまう馬鹿ですが頑張ります!笑 (2018年1月22日 0時) (レス) id: eb7b6b7134 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:arena | 作成日時:2018年1月11日 21時