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マフィアの拠点からそれほど離れていない倉庫街に、二人の青年の姿があった。しかし、日光を反射し、きらきらと光る美しい海には見向きもせず、互いを睨みつけている。敦と芥川だ。
「指定した時刻にはまだ早いが…人虎は時計が読めぬのか」
「呼んだ用をさっさと話せ!」
「先日会った時に比べて威勢が良いな」
「どうでもいいだろ!」
芥川は一拍置き、少し後ろを向いて声をかける。すると、大きな箱がたくさん積まれた隙間から、Aがゆっくりと姿を現す。敦は目を見開いた。
「ね、姉さん!」
「人虎、一つ伝えておく。貴様の姉は記憶喪失だ。貴様のことは微塵も頭に残っていない」
「嘘、だろ…」
「怪我のショックだそうだ。貴様が原因だ」
「僕はっ…!そんなつもりじゃ…!」
「ねえ…」
Aは芥川より少し前に立ち、敦を見る。その目には、不安と恐怖、悲しみが混じっている。敦は半歩退いてしまった。
「…ごめんなさい、私、本当に記憶がなくて…。貴方のこと、覚えていないの。…私、貴方に何かしていたの?酷いことをしたの?だから、私を殺そうとしたの?」
「違っ…違う、んだ…」
「じゃあ、どうして?」
「わざとじゃ、なかったんだ…!」
Aは拳を握り、声を荒らげる。
「私は知りたいの!自分のことや他の人との関係も知りたい!でも、どうして自分がこうなったのか!貴方に何をしてしまったのか、知りたいの!!」
「話にならぬ。下がれ、A」
「芥川さん…!」
芥川はAの腕を引いて、やや強引に後に下がらせる。
「貴様は姉を…Aを殺そうとした。ただそれだけの事。理由など存在せぬ」
「だ、まれ…」
「貴様は、Aにとっての刺客…この場で首を切り落とす。生け捕りの命令など、僕に関係の無いこと。『羅生門』!」
芥川の外套がゆらりと蠢き、黒獣の姿へと変わる。Aは怖くなり、箱の裏側へと逃げる。
「A、僕の合図があるまで、姿を現すな。死ね、人虎!」
黒獣が敦へと襲い掛かる。が、間一髪の所で避け、倉庫の上へと着地した。
「姉さんとちゃんと話したいのに、お前は邪魔だ。僕は、姉さんに話すことが沢山ある!けれど、芥川!その前に、お前を倒す!!」
敦の手足が虎へと変化する。異能の操作が、少しだけ出来るようになったのだ。そして、芥川へと襲い掛かる。Aを取り戻すために。
「お前は邪魔だ!!」
「貴様は僕が殺す…!」
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arena(プロフ) - あかりさん» 無言参加失礼しました…。読んでいただいて光栄です!ありがとうございます! (2018年1月29日 7時) (レス) id: eb7b6b7134 (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - イベント参加ありがとうございます! すごい面白いです これからも頑張って下さい! (2018年1月29日 2時) (レス) id: 59dc504c48 (このIDを非表示/違反報告)
arena(プロフ) - ちゅうや大好きさん» ありがとうございます! (2018年1月28日 13時) (レス) id: eb7b6b7134 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅうや大好き - すごく面白いです (2018年1月28日 12時) (レス) id: 2184bb70c3 (このIDを非表示/違反報告)
arena(プロフ) - 瑠李さん» ありがとうございます。自分の作品の内容を忘れてしまう馬鹿ですが頑張ります!笑 (2018年1月22日 0時) (レス) id: eb7b6b7134 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:arena | 作成日時:2018年1月11日 21時