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滲み出た涙が頬を伝い、粒となってAに降る。
そのあと、ようやくAの指先はぴくりと動いた。気を失っていなかったのにもかかわらず目覚めたような素振りを見せるAは、頬の痛みよりも絵名が泣いていることに涙を流す。
手を伸ばしてそっと涙を拭うと、思っていたよりも温かい涙の温度が手のひらに広がっていく。自身も泣いているくせにこちらを気遣う姿が、どうしようもなく絵名の心を打った。
「なんなの、アンタ」
「……え、なちゃ」
「だいっきらい……」
「…ごめんね、えなちゃん」
「うるさい喋んないで」
そう言うと唇を噛んで喋らなくなるので、絵名はすべてが馬鹿馬鹿しく感じた。こんなやつに何をしても気にする必要なんてないんじゃないか、と思うほどに。
暴れ狂った体は疲労感を訴えていて、体制が辛くなってきたので起き上がる。こんなことをしたのにどこか清々しい気持ちだ。むしろこんなことをしたからだろうか。それで、次に覚えるのは。
「お腹すいた」
「……」
「チーズケーキ食べたい」
「……」
永遠に口を閉ざしたAを軽く小突く。
残った感情もチーズケーキとともに咀嚼してしまおうと、絵名はフォークを手に取るのであった。
調子を取り戻した絵名を見てのほほんと笑っているAと共に。
「アンタも食べるでしょ?チーズケーキ。……は?一個しか買ってきてないの?もー、私の半分あげるから。いらないとか言わないでよね。………てかいい加減喋りなさいよ」
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あきまる(プロフ) - ょむむむさん» コメントありがとうございます!このえななんは私も気に入ってます💕💕 (9月20日 20時) (レス) id: ed0e33f0ac (このIDを非表示/違反報告)
ょむむむ - えななんが最高にえななんらしくて好き!!かわいい💕更新頑張ってください! (9月20日 20時) (レス) id: 946b79f9ed (このIDを非表示/違反報告)
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