007 ページ8
｢おい！大丈夫かアルミン！と……お前はさっきの！｣
逃げなきゃ、と思う頃にはもう腕を掴まれていた。
｢お前！さっきも調査兵団のこと見に来てたよな！初めて見る顔だけど、この辺の奴じゃねえのか？調査兵団に興味があるのか？！名前は？！なんでアルミンと一緒にいんだよ！｣
｢エレン、この子が困っている。質問はひとつずつにしてあげて｣
彼も彼女も、この3人はわたしの瞳を優しい目で見つめてくれた。
あれから視力が衰えたおじいちゃんおばあちゃんと先生としか目を合わせられなかったわたしにとって
それは警戒心を解く以外の何ものでもなかった。
｢そ、そうだなミカサ！悪ぃ。アルミン！立てるか？｣
｢一人で…立てるよ｣
わたしが生まれて初めて守ろうとした彼女は、あっけなく2人に助けられてしまい
そんな彼女は、綺麗な顔を歪ませて苦しそうに立ち上がった。
少年──エレンというらしい──に｢また逃げられないように｣と腕を掴まれたまま移動した場所は、広い河川敷だった。
時刻はわからないけれど、太陽が徐々に傾き始めて街がオレンジ色に染まっていた。
4人で適当に石段に腰掛けると、エレンは川に小石を投げ込む。
｢名前、なんていうんだ？｣
いつぶりだろうか。同年代の子と話すのは。
『A・ローゼンベルク…家族を失って2年前ここに来たの。今は10歳。村にいたときのことは…話したくない』
｢Aっていうのか！よろしくな｣
過去のことに一切触れずに、エレンはわたしに手を差し伸べてくれた。
恐る恐る握り返すと
｢お前の目、すげー綺麗だな｣
と、言った。
この目を綺麗だと、言われた。
『うそ…だ……』
｢嘘なわけあるかよ！今まで見たことねえよそんな綺麗な色！なあふたりとも｣
視界の端でふたつの頭がこくりこくりと縦に揺れていた。
うまく息が吸えない。
胸がぎゅっと苦しくなる。
｢あぁ忘れてた！俺はエレン・イェーガーだ！俺たちもAと同い年なんだ｣
｢ミカサ・アッカーマン…あなたの瞳、とても綺麗で驚いた｣
｢アルミン・アルレルトだよ！さっきはありがとう｣
アルミンは眉を下げてわたしに笑いかけた。
いっぱいいっぱいの脳でも、その暖かい笑顔を見て
(可愛い…)
などと考えていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 44人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：餃子 | 作成日時：2021年5月23日 4時
