きみに花束は渡せない【進撃の巨人】 (ページ6)

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同じ日々を繰り返して、わたしは10歳になった。

朝起きて薪を集め、昼食を食べてから先生の元へ行く。

夕方まで談笑して、暗くなる前に家に帰り夕食を食べて眠る。

そんな中ひとつだけ変わったことがある。

こっそりと調査兵団の出発と帰還の行列を見送ることだ。

たぶんわたしは、兄の目指した外の世界に憧れると同時に

大きな翼を背にしたマントを翻す彼らに

人類のため命を懸ける彼らに

憧れ始めていたのかもしれない。

今回は昨日出発してからまだ鐘の音を聞いていない。

いつ帰ってきてもいいように早めに支度をして市街地へ向かった。

到着したのは鐘の音が聞こえてからだった。

冷たい目線を向ける大人たちをかきわけて最前列に飛び出したわたしと目が合ったのは

右脚のない兵士だった。

『…ぁ』

思わず声が漏れたわたしに気づくと、その兵士はバツが悪そうに目を逸らした。

止まらない進行が突如静止したのは、その直後だった。

…放心していたんだと思う。

何が起こったのかがわからなかったんじゃない。

あまりにも格好が悪すぎて(・・・・・・・・・・・・)

現実が受け入れられなかったのだと思う。

ぼうっと顔をあげると、向かい側の道で木箱に乗った男の子と目が合った。

｢…！おいお前…！｣

すると彼はわたしを指差して声をあげた。

見たことがある…この光景……これは……

─────ママ！こいつが僕に呪いかけてきた！

─────あんたにその力がなければいつでも殺してやるのにねぇ…！

まずいバレた

わたしはなりふり構わず急いで逃げた。

入り組んだ路地の角をいくつか曲がった先にあった物陰に隠れて様子を見ると

幸いあの子は追いかけてきていなかった。

(平和ボケしてた…)

そうだ、わたしの瞳は人々に災いをもたらすんだ。

例えそんな力がなくたって関係ないことをどうしてわたしは……。

まだ息の切れている身体を無理やり起こして家路についた。

確か先生は今日、内地へ診療に行くから会えないと言っていた。

良かった…

どうしても今日は、先生に会う気にはなれなかったから。