きみに花束は渡せない【進撃の巨人】 (ページ25)

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｢だから、見たことあるって｣

数十人ほどが食事そっちのけでエレンを囲んでいる。

わたしとアルミンはミカサと並んでスープとパンに手をつけた。

わたしたちが食べ終わる頃には何故か憲兵団志望の───確かジャンといった気がする───と一触即発の危機になっていたけど、なんとか和解したみたいだった。

そのまま出ていったエレンをミカサが追い、アルミンは他の訓練兵と話し込み始めた為

先に部屋に戻ろうと席を立つと

｢なああんた…名前、なんて言うんだ｣

金髪のガタイのいい人に話しかけられた。

身長の高い人は知り合いなのか、隣で同じようにわたしを見下ろしていた。

『A・ローゼンベルクだよ。ふたりは？』

わたしに興味を持ってもらえたことが嬉しくてうきうきで返答したら

｢…！｣

揃って口元を抑えて驚いたような顔をしていた。

『？』

｢あ、あぁすまない！あまり聞かない姓だったから驚いちまった。俺はライナー・ブラウンだ｣

｢僕はベルトルト・フーバー｣

『ライナーとベルトルト！よろしくね』

聞かない姓か…確かに家族以外の同姓はまだ出会っていないな。

シガンシナへ移ってからほとんどこんな挨拶を交わすことがなかったから気づかなかった。

｢ああ。出身はどこなんだ？｣

『ウォール・マリアの外れの村だよ。4年前にシガンシナ区へ移ったの』

｢そうなのか…家族は開拓地に？そういえば兄弟はいるのか？お前だけ入団したのか？｣

『家族はみんな死んだけど…ちょっと待って、そんなにわたしのこと気になる？』

あまりの食いつきに思わずストップを出してしまった。

初対面でグイグイくるな……あれ、もしかしてこれって

『ナンパ？』

｢ちちちちがうよ！神に誓って！｣

半分冗談で聞いたつもりなのにベルトルトにとんでもない勢いで否定されてしまった。普通にショックだ。

｢俺たちも外れの小さな村出身でな。ちょっと親近感が湧いて取り乱しちまっただけだ。深い意味はねえよ｣

そう言うとライナーはわたしの肩にぽん、と手を置き

｢これからよろしく頼む｣

と言ってベルトルトと食堂を出ていった。

その後、シャワーを浴びて部屋へ戻ると

食事抜きで死ぬ寸前まで走らされていたわりにはツヤツヤとした表情のサシャがいた。