019 ページ20
『──そのとき、助けてくれたのがイェーガー先生っていう人で』
そのときだった。今まで黙って聞いてくれていた3人がそれぞれに声を出して驚いたのだ。
｢イェーガー…先生？｣
｢おいA！その先生、グリシャって名前か？！｣
『え、そうだよ…え？みんなのかかりつけだった…？』
｢……いや。それ、俺の親父だ｣
『…エレンの、お父さん』
確かに同じイェーガー姓だから血縁関係もよぎってはいたけどまさか父子とは思わなんだ。
｢こんなこと、あるんだね…｣
｢でもどうしてAを1人で住ませたの？私は養子になったのに｣
『先生はそのつもりだったけど、わたしが断ったの。匿ったことが村の人に何かでバレたら迷惑かけると思って』
わたしの答えを聞くと、ミカサはそっとわたしの手を握った。
｢じゃあ私たちも家族ってことだ｣
『家族…？』
ミカサとエレンは先生の家族。ならばその先生に別ではあるけれど面倒を見てもらっていたわたしも家族だと言うのだ。
なんか無理やりだけど、すごく、すごく、
『あったかい…』
｢A…｣
｢私の手、冷えてると思うけど｣
『あはは そうじゃないよ』
真面目な顔で自分の手の温度を確認するミカサが面白くて、つい表情筋がゆるんだのがわかった。
｢Aが笑った…｣
はてなマークを浮かべるミカサの横で、エレンが呟いた。
『わたしはよく笑うほうだよ』
嘘はついていない。だからちょっと強気に返したら
｢お前は笑ってるほうがいいよ。昨日も言ったけど、目の色だってすっげー綺麗だと思う。他のやつにはない長所ってやつだろ｣
そう言って頭を撫でられた。
｢もしその村の奴らがお前を見つけてギャーギャー喚き出したら、俺が必ずぶっ飛ばしてやる！だからもうコソコソすんな｣
｢エレンひとりじゃ不安。私も加勢する｣
｢僕は力じゃ勝てなそうだから…Aは悪魔なんかじゃないって理解させてみせるよ｣
次々とわたしの手を取るみんなの顔が、どうしてだか滲んでいた。
『ありがとう……本当に…ありがとう…』
ぽたりと雫が誰かの手に落ちると、みんなが一斉に笑った。
わたしも笑った。泣きながら笑った。
数日後、大量の避難民たちは食料確保のため荒地の開拓に回された。
わたしたちも勿論それに参加し、毎日朝から晩まで平地を耕した。
それでも食料難は避けられなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 44人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：餃子 | 作成日時：2021年5月23日 4時
