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｢くそ！誰があんなやつらの世話になるか！｣
兵士が去ったあと、わたしたちは人の少ない日陰に移動した。
エレンはまだ立腹している。
｢戻ってやる…ウォールマリアに！巨人なんか全部ぶっ潰して！｣
｢エレン、本気で言ってるんじゃないよね？｣
｢本気だ！俺は壁の中で強がってるだけのあいつらとは違う！｣
そしてエレンはなんと
｢こんなものいらない！｣
アルミンのおじいさんがせっかく貰ってくれたパンをアルミンに投げつけたのだ。
｢エレン！飢え死にしちゃうよ？！｣
｢お前悔しくないのかよ！そんなもん恵んでもらってるから巨人に勝てないんだ！｣
｢無理だよ！勝てるわけない！｣
でもそれどころじゃない。アルミンも負けじと言い返すから、どんどんヒートアップしていく。
｢無茶をすれば死ぬ！僕の父さん母さんみたいに！｣
｢だからあいつらにペコペコするのか？！恥ずかしくないのかよ！｣
｢今はしょうがないよ！｣
｢しょうがないなんて言い訳だ！だったらいつまでもそうやって家畜みたいに生きろ！弱虫！｣
『ちょっとエレンいい加減に───・・・』
伸ばした手は空を切った。
ミカサが殴り飛ばしたからだ。それもかなり派手に。
風が吹き抜ける。
その風がわたしたちの髪を撫でてから、ミカサは口を開いた。
｢アルミンが弱虫なら、エレンも私もAも同じ。私たちは巨人から逃げるのも、街から逃げるのも、なにひとつ自分でやっていない｣
｢今日食べる物さえも恵んでもらった。そんな力のない人間が、あの巨人を一匹だって倒せるわけない｣
｢……っ｣
｢大切なのは生きること。おばさんが言ってた通り｣
まさに正論の中の正論で、エレンはおろかわたしたちまで立ちすくんでしまった。
ミカサは先程エレンが投げつけたパンを取り、彼の口に押し込んだ。
｢食べて、ちゃんと生き残るの。エレンを飢え死になんかさせない｣
ぼたぼたと涙を流してようやく落ち着いたエレンを見て、ミカサは小さく息をついた。
わたしはさっきの言動がいっときの感情だとしても許せなかったので、ゆっくりエレンに近づき
咥えたままのパンをぐりぐりと押し込んだ。
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作者名：餃子 | 作成日時：2021年5月23日 4時
