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船が動いた。出航するのだろう。
エレンとミカサはひとつも言葉を発さない。
わたしもアルミンも、それを変に咎めたりしない。
言葉なんてなくても 何があったかわかるから。
静かに4人、肩を並べて座っていた。
船が水を切る音と、怯える人々の声だけが船上に響く。
戻るのか…ウォールマリアに。
シガンシナもウォールマリアだけれど、そんな細かいことはどうだっていい。
わたしにとってあの門は、あの壁は、なによりも分厚い境界線だったのだ。
あの村は門からはそんなに近くないけれど、このまま南方にいれば遭遇しない保証なんてゼロに等しい。
この混乱に乗じ思い切って北方まで行ってしまおうか…。
なんて無謀な計画を企てながら、バレないようにそっと横目で3人を見る。
(…そうすれば、わたしはまた1人になるのか)
先生に会いたい。今はただそれしか考えられなかった。
────出航からさほど経たないうちに憲兵団が放つ大砲の音が止んだ。
巨人を掃討したのだろうか？いや、それにしては早すぎる。
なんだろうかと身を乗り出したときだった。
ありえないスピードで進む巨人の足音が響いてきた。
『うそ…』
一瞬だった。
今のわたしたちにとっての最後の砦である、シガンシナとウォールマリアを繋ぐ門が突破されたのだ。
『アルミン…わたしたちこのままウォールローゼにいって大丈夫なのかな……』
アルミンはどこに隠し持っていたのか、古びた本を大事そうに抱えて答える。
｢わからない……でもそうするしかないんだ…今の僕たちには…そうするしか……｣
『そうだよね…ごめん…』
なんだか気まずくてほとんど同時に下を向くと、今度はエレンが何かぶつぶつと言いながら
よろよろと
｢エレン｣
後を追うミカサの後をわたしたちも追いかける。
｢どうしたの？｣
『危ないよエレン』
差し伸べたわたしたちの腕も振り払うエレン。
そんなエレンはぼたぼたと涙を流して確かにこう言ったんだ。
｢駆逐してやる…この世から…一匹残らず！！｣
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作者名：餃子 | 作成日時：2021年5月23日 4時
