行間に愛を［Hokuto］

寄り道 (9/3) ページ37

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「お母さん、帰ってくるの何時？」

「たぶん、18時過ぎだと思います」






初めて乗る、松村先生の車。

すんとした空気と先生の匂い。



昼下がりのまったりと流れる時間。
信号待ち、運転席にいる松村先生をチラリと盗み見る。





メガネをかけた横顔はもちろん、

少し捲ったシャツから覗く腕と、
意外と華奢な手。


運転するところ、初めて見た…

かっこいい……




「ふふっ、」
先生が急に、腕で口元を隠して笑うから驚いてたら

「かっこいい？」と
こっちを見て目を細めて、堪えきれないように笑った。



「えっ」
「心の声？ダダ漏れだけど大丈夫？」


そう言いながらカーブを切った揺らぎの中で、
わたしの気持ちもゆらゆら揺れる。






「あれ、ここ」

先生が車を止めたのは、コンビニ。


「モモちゃん、今アイス食べれる？お腹どんなかんじ？」
「え」
「まだ時間あるし、ちょっと寄り道しない？」
「え…やった、アイス食べます！」
「ふっ、よかった、アイス何がいい？」
「んーっと…先生のおすすめで」

そう言うと、目を丸くしたと思ったらふわっと笑って
「あー、じゃあ覚悟しとけよ？」といたずらっ子の顔をした。



先生がいなくなった車の中で、
この、しばしの非日常感に心をときめかせて
膝の上に乗せたカバンをぎゅっと抱きしめた。



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