恐怖の先に ページ21
.
2人の間に流れる沈黙。
「すみません…ちょっと、テンション上がっちゃって」
すぐにしゃがみ込んで、散らばったプリントを一枚一枚、本を一冊一冊集める。
今この瞬間を、松村先生に見られてること自体が恥ずかしくて、ほっぺがじんわりと熱を持って、体が熱くなる。
プリントをかき集める指を、オレンジの陽が照らす。
綺麗だな、ってこんなときに呑気な私。
綺麗に磨いたツルツルの爪に、夕日が反射してキラキラする。プリントを集めているふりしながら、爪のキラキラを見つめていると、ふと視界が暗くなった。
あれ？もう太陽沈んじゃった？と顔を上げると、松村先生の顔があった。
夕日に透けた松村先生の髪が、金色に見える。
伏せられたまつ毛、くちびる、顔にかかる影、すべてが綺麗だった。
「モモちゃんがそんなにテンション上がってるのも、めずらしいね」
うつむく松村先生の首筋と、
首筋にかかる髪の毛が作り出す、影。
松村先生が、プリントを一枚ずつ集めながら言った。
「そ…そうですか？」
「うん、そうでしょ？」と言う松村先生と目が合う。
ドキ。
ドキドキ。
「松村先生、」
「ん？」
愛おしくてたまらないって顔。
自惚れじゃないって信じたい。
だって、
近づく距離。
少し怖くなって後ずさりしたらバランスを崩して、床に座り込んでしまった。と、同時に、私を支えようとした松村先生まで倒れてきた。
フィクション？？
わたしを包む松村先生の匂いに脳内を支配されて、何も考えることができない。この状況で、何か考えろって言う方が鬼。
目の前にある、まつ毛。
何もできずに、動けずに、ただ松村先生の微かに震えるまつ毛を見つめる。
僅かに開いた松村先生の唇。
色っぽい仕草に息が止まる。
先生の唇の隙間から、わたしを溶かす毒が漏れ出ているようで、恐怖を感じた。
石のように固まっていたら、
その唇が、私の唇に重なる瞬間。
心臓まで止められて、
松村先生の毒と、熱が
わたしに移された。
共犯だ。
でも今はそんなことはどうでもよくて
ただこの毒にずっと浸っていたかった。
目を閉じて、恐怖の先にあった喜びを堪能する。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1155人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
つき(プロフ) - たかっち(葉月)さん» ありがとうございます〜〜！！（ ; ; ）ドキドキしてくださってるなんて、とてもうれしいコメント…お待たせしていて申し訳ないですがどうぞこれからもよろしくお願いします (2021年2月11日 2時) (
レス) id: 7ed4157c8a (このIDを非表示/違反報告)
たかっち(葉月)(プロフ) - とてもドキドキしています。久しぶりにこちらのサイトで目に止まったのがこちらの作品でした。上手く言えませんが、とにかくすごくドキドキしちゃってます！北斗担なので、余計かな･･･笑更新心待ちにしています (2021年2月6日 16時) (レス) id: 2cfc0e60bd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：つき
| 作成日時：2021年1月25日 0時
