行間に愛を［Hokuto］

いつの間にか ページ2

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最初の、現代文の授業。




「松村、北斗です」


と黒板に書いた文字が、
綺麗だと思った。



現代文は、こういうふうに進めていきますよ、

って軽く説明して
それから質問タイムが始まった。




松村先生の使う日本語は難しい。

でも、なんか
わからないことばっかり話してた
前の時間の化学の先生とは違って

意味はわからなくても
先生のやわらかな話し方や少し掠れる声で
言葉のニュアンスが伝わってくるから不思議だ。




「他に聞きたいことあるやつ、」
って、先生はきっと授業のこと聞いたはずなのに


うるさそうな男子が手を挙げた。
「はい！先生は彼女いますか！」


何聞いてんの。
…わたしも気になるけど。

「お前らに教える義務は、ねえ！」



びっくりした。
急に言葉遣い荒いんだもん。

でもそれがなんだか面白くて、
クラスのみんなの笑いを誘った。








初めての松村先生の授業が終わって
みんなが「松村先生めっちゃイケメン！」って
こそこそ話し始めたのが聞こえた。


みんな、外見しか見てないんだって
ちょっとイラッとしてみたけど

かく言う私だって、
松村先生のこと、何も知らない。


「桃瀬、」

「あっ、はい！」

「悪いけど、課題回収して職員室持ってきといて」



全然悪くなんかない。

また、松村先生と会えるんだって
嬉しくなる。





いつのまにか、好きになってた。


自分の、
松村先生への恋心に気づいたのは



教室を出て行くその背中を寂しく思い、

廊下を歩くその背中の温度が知りたいと思い、

すこしパーマをあてているのか
猫っ毛のようなその髪に、触れたいと思っている
自分に気づいたときだった。



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