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私の顔を見るなり眉間に皺を寄せて、弱々しい声でそう呟かれた。所謂(いわゆる)記憶喪失というやつなのではないか。……頭の中が混乱して上手く喋れない。




「俺は?分かる?」


「小田島______」


「……正解」



小田島さんはバツが悪そうに、複雑な表情をして頭をかいた。
深くため息をついて彼はまた口を開いた。




「その子は、鳴瀬Aちゃん。轟ちゃんの『友達です』そう、ともだ………ち」


『取り敢えず、目が覚めて良かった。お医者さん呼んでくるね。…あ、小田島さんも来てもらっていいですか?』





彼が私のことを紹介しようとした時に、思わず自分で遮ってしまった。彼は今病み上がり、しかも記憶喪失なのに彼の身体に負担をかけてまで私の記憶を取り戻す必要もないだろう。
小田島さんも察したのか、そのまま話を合わせてくれたけど、驚いたのか私の顔を見ていた。





「Aちゃん、あれで良かったの?」


『はい、洋介の身体が一番なので。今、無理に記憶を取り戻そうとして、身体に負担掛けるの嫌だから、敢えてそうしました』


「そ……。Aちゃんが決めたことなら口出しするつもりもないし、俺にできることあったら、言ってね」


『ありがとうございます』




その後は彼の診察が無事終了した。経過は良好らしく、記憶喪失は一時的なものではないかと判断しているものの、一生記憶を取り戻さない場合もあるとの事だった。




「じゃあ、俺ら帰るから。轟ちゃんは安静にね」


『よう……轟くん、お大事に』


「2人ともありがとな」


「いいってことよ。…じゃあね」



洋介と親しみを込めて彼を呼んでいたのだが今はそれさえも、憚られる気がして、言葉をぐっと飲み込んだ。両肩を優しく掴まれて、強制的に回れ右をさせられてしまった。勿論、小田島さんの仕業。



「Aちゃん、帰ろっか。…そうだ、アイスでも買っちゃう?ほら見て。新作のアイス発売されたから」


『……!!美味しそうですね。…はい、買って帰ります…!』


「よし来た。じゃあ近くのコンビニ寄って帰ろ」




今日は小田島さんの優しさに何回も救われてしまった。洋介から聞いた話だと、小田島さんよくラブレターとかもらってモテてるって聞いていたから、納得だった。





.

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ポウ(プロフ) - とてもキュンキュンして読んでます。早く轟記憶戻って〜。続き楽しみにしてます。 (12月10日 22時) (レス) id: 4b00597d9c (このIDを非表示/違反報告)
可愛。(プロフ) - にこさん» お待たせしてます…!のんびりペースですが、最後まで描き切ろうと思っているので、お付き合いいただけたらと思います。これからも読んでいただけると嬉しいです。 (12月4日 3時) (レス) id: 09f0b999d7 (このIDを非表示/違反報告)
にこ(プロフ) - もう続き書きませんか?T ·̫ T (11月13日 0時) (レス) @page6 id: d1b09c5066 (このIDを非表示/違反報告)
可愛。(プロフ) - あさん» ありがとうございます!ゆっくりですが、更新していきますので、これからも読んでいただけると嬉しいです❀ (9月12日 19時) (レス) id: 272227e8f1 (このIDを非表示/違反報告)
- とっても面白いです!続きがきになる〜! (9月2日 14時) (レス) id: 0f0ccaba32 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:可愛。 | 作成日時:2022年10月28日 2時

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