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10話 ページ10

…ああ!駄目だ駄目だ、こんな暗い気持ちは!
頬を手のひらで軽く叩く。さあ切り替えて、では何を話そうか。
「あ、あの……」
うんうんと考えていれば、千鶴ちゃんから声がかけられる。
「今日会ったばかりなのに、こんなこと聞いていいのか分からないですけど…」
「ふふっ、もう一緒にお風呂に入る仲じゃない。なんでもどうぞ」
「じゃあ、えっと…」
千鶴ちゃんは一瞬だけ外の方を見て、もう一度私の方を向いた。
何を言おうとしているのか、私の顔を伺いながら言葉を紡ぐ。
「Aさんは沖田さんと、その、恋仲なんですか……?」

ん?
「ん?」
「あっ、えっと!そうなのかなって!ちょっとしか見てないですけど、何だかお二人でいる時の空気が他の方と違うかなって!」
慌てて口元を隠す千鶴ちゃんだが、その声は全然小さくない。
「ま、待って声が大きいからそこにいるから待って千鶴ちゃん」
「ひぁ、ごめんなさいっ」
心でも覗かれたのかとどきりとする。私、声に出してただろうか。そんな小っ恥ずかしいことをしてたのだろうか。
「な、なんでそんなこと言うの……?」
「やっぱりそうなんですね…!?」
ぎこちなく出た声と照れてしまっている表情で答えてしまっていたようだ。千鶴ちゃんは興味深そうに、そして何故か嬉しそうに、目を輝かせた。
「私、まだ恋とかよく分からないんですけど、聞くのは大好きで」
千鶴ちゃんは食い気味に言う。
つまり、話してということか…?でもその前に、訂正しなければいけないことがある。
「違うの、恋仲とか、そんなんじゃない!」
「でも、お顔が赤いです…?」
「こっっっれは、お風呂に入ってるからですっ!」
手で顔を扇ぐ。うん、まあまあ暑い。というか熱い。多分赤いのはのぼせ気味とかそんなんじゃない。
「つまり、好いていらっしゃるんですね……!」
私の反応を見て確信を持ったのか、千鶴ちゃんはもっと目を輝かせる。
今の私には撃沈という言葉がしっくりくる。否定は出来ないけど、肯定もしづらい事情がある。けれどもこんなにどぎまぎとしてしまったら、もう肯定するしかない。
「まあ、その……すき…だ、けど……」
観念するしかない。絞り出した声は蚊が飛ぶより小さい音になっていた。
ここまでの会話が全て、総ちゃんに聞こえてませんように。
そしてこの後の会話も、聞こえませんように。
「……でも、言えないから」
「え?」
私の言葉に、千鶴ちゃんはこてんと首を傾げる。

「私、今度見合いをするんだ」

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設定タグ:薄桜鬼 , 沖田総司   
作品ジャンル:恋愛
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あめ(プロフ) - 帰蝶さん» ありがとうございます…!私が泣いて喜びました;;;;コメで元気もらえました、頑張ります! (2021年7月23日 10時) (レス) id: c4879c790e (このIDを非表示/違反報告)
帰蝶(プロフ) - 初めまして!とても面白かったです!沖田さん好きなので是非お時間ある時に続きを書いていただけますと泣いて喜びます!陰ながら応援しています! (2021年7月20日 1時) (レス) id: 8097c0e74f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あめ(雨星) | 作成日時:2021年4月26日 9時

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