6話 ページ6
「はあ?屯所に暫く泊めてくれだァ?」
眉間に深い皺を寄せる土方さんと驚いた表情の近藤さんを前に、私はぎこちない笑顔を作った。
自分でも思う。なんて図々しいこと言ってるんだろう、と。
京には、一週間から二週間くらい居れたらいいなと思っていた。それなりにお金も用意して来たつもりだったけれど、総ちゃんに聞いた宿代はとんでもない金額で、とてもじゃないが連日払えそうになかった。
今思えば騙されたような気がしなくもない。聞いた金額は途中泊まってきた宿の四倍の金額だったのだから。
「ま、良いじゃないですか。Aだし」
「良いわけねえだろ。ここは屯所だぜ?てめぇの保護施設じゃねえっての」
「うっ…ですよねぇ…」
こうなるだろうとは分かっていたけど、あまりの心苦しさに震える。土方さん、ため息すごい。ごめんなさい。
「まあまあトシ。そこまで否定せんでも良いだろう?」
聞き入れる様子のない土方さんに、仏のような近藤さんの救いの手が入る。
「ここにはAの顔見知りも多いのだから問題は無かろう。是非客人としてゆっくりしていくといい」
「流石近藤さん。誰かさんと違って懐が大きいなあ」
「てめえは黙ってろ総司!」
けらけらと後ろで笑う総ちゃんに、土方さんの鉄槌が下る。
このやり取り、試衛館の頃と変わらないな…と内心思いながらその様子を見つめた。今の問題は私のせいだから、何とも言えないのだけど。
「つっても近藤さん、どこの部屋を宛てがうんだよ?この客間だって来客の応接に使うから四六時中は使えねえしよ」
「うむ…確かにそうだな」
考える仕草をした近藤さんに、総ちゃんが手を挙げる。
「それなら僕の部屋に置きますよ。泊まればって言ったの僕だし」
「え」
まさかの提案だった。
何それ、本気?そう思っていたら、私が何か言うより先に近藤さんが首をぶんぶんと振る。
「それはいかん!いくら総司と言えど、嫁入り前の娘を男の部屋にはやらんぞ!」
まるで父上…ううん、多分父上よりも父のように否定してくれる…。
「あはは、そんなに首振らなくても。どうせAと僕だし何も無いですよ」
「んな事言ってお前ら、昔は夫婦になるだどうの言ってたじゃねーか」
「は、はあーーーー!?」
俺は知ってるんだからなとでも言うような顔をする土方さん。
「あれ、そうでしたっけ?」
「む、そういえば確かに総司とAはそんな仲だったな…」
とぼける総ちゃんに、考え込む近藤さん。
なんだか段々、収拾がつかなくなってきた。
ラッキーアイテム
革ベルト
ラッキーカラー
あずきいろ
76人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あめ(プロフ) - 帰蝶さん» ありがとうございます…!私が泣いて喜びました;;;;コメで元気もらえました、頑張ります! (2021年7月23日 10時) (レス) id: c4879c790e (このIDを非表示/違反報告)
帰蝶(プロフ) - 初めまして!とても面白かったです!沖田さん好きなので是非お時間ある時に続きを書いていただけますと泣いて喜びます!陰ながら応援しています! (2021年7月20日 1時) (レス) id: 8097c0e74f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あめ(雨星) | 作成日時:2021年4月26日 9時