検索窓
今日:5 hit、昨日:9 hit、合計:9,687 hit

4話 ページ4

少し離れた場所で、乱闘になりそうな店の様子を窺う。
総ちゃん達が行くことで騒いでいた男は一瞬狼狽えた様子を見せたが、まだもう少し収束に時間はかかりそうだ。

「あ、あの」
「はい。何か?」
隣に立っていた少女は沈黙に耐えられなくなったのか、私にぺこりと頭を下げる。
「私、雪村千鶴と言います。一年ほど前から新選組でお世話になっています」
「ごめんなさい、挨拶してませんでしたね…」
私が謝れば、その子は控えめに笑う。
「いえ、私こそ…名乗るのが遅くなりました。よろしければ、お名前を聞いても良いでしょうか」
「もちろん。私は香月(かづき)Aと申します。総ちゃん…いえ、沖田とは昔馴染みでして、江戸から参りました」
簡単な自己紹介が済めば、また沈黙が流れる。

そういえばこの子は何で男装をしているか、聞いていなかった。あと新選組とどんな関係なのかも。
「雪村さんは、どうして男装を?」
「あっ…気になりますよね。男所帯の新選組で女がいると、隊内の風紀が乱れるということで男装をしてます。だから殆どの隊士さんには性別も明かしてないんです」
「へえ…?」
頭の中で疑問が浮かぶ。なんでそこまでして新選組にいるの、この子?
軟禁、とかだろうか。何か事情があるのだろうけれど…
そこまで考えた時、彼女はまた口を開く。
「…さっきちょっとだけ聞こえたんですが、私、沖田さんの恋人とかそんなんじゃないです」
「え」
聞こえてたの?という驚きと、ちょっとした恥ずかしさ。
「私、父を探していて。それで一緒に巡察に連れてもらっているんです。
父様は蘭学医で…新選組にも関わりがあって。手がかりを探す為にも、ここに置いてもらっています」
彼女が明かした理由は、何だか複雑そうなものをはらんでいる…ように見える。少し寂しげな瞳が揺れて、私は自分の勘違いを申し訳なく思った。
「…ごめんなさい。ろくに話も聞かないでこそこそと、失礼でした」
「いいえ!私こそ盗み聞きのようなことをしてしまって、すみません。新選組以外の人とあんなに親しそうに話す沖田さん、初めて見たもので…」
素直にそう言ってくれる彼女は、きっと凄くいい子なんだろうなと思った。
「…えっと、私も千鶴ちゃんって呼んでもいい?」
こういうの、自分から言うの得意じゃないんだけど、私もこの子と仲良くしたいなと思ったから口に出してみる。
彼女は花が綻ぶような笑顔を見せて、頷いた。

5話→←3話


ラッキーアイテム

革ベルト

ラッキーカラー

あずきいろ


目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.3/10 (22 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
76人がお気に入り
設定タグ:薄桜鬼 , 沖田総司   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

あめ(プロフ) - 帰蝶さん» ありがとうございます…!私が泣いて喜びました;;;;コメで元気もらえました、頑張ります! (2021年7月23日 10時) (レス) id: c4879c790e (このIDを非表示/違反報告)
帰蝶(プロフ) - 初めまして!とても面白かったです!沖田さん好きなので是非お時間ある時に続きを書いていただけますと泣いて喜びます!陰ながら応援しています! (2021年7月20日 1時) (レス) id: 8097c0e74f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あめ(雨星) | 作成日時:2021年4月26日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。