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13話 ページ13

鏡の中で真っ赤な紅が浮いている。
「付けすぎかな…」
これは数年前に祖母がくれた紅だが、貰ってからあまり使っていなかった。
高級品であったから勿体ない気持ちもあって、ずっとしまい込んでいたのだ。
「ねえ、まだなの?僕もう準備できてるんだけど」
障子越しに声がかかる。総ちゃんだ。
「あとちょっと…あと簪挿して終わる…」
「へー。女の子って大変だね」
とてつもなく興味のなさそうな声。
分かってるつもりだ。幼馴染の化粧なんて興味無いのも、今更なんだっていうのも。
でも後悔しないように、思い残さないようにしたいから。総ちゃんの隣が似合う、少しでも綺麗な女性に見えて欲しい。
「よしっ!」
「もう大丈夫?」
「ばっちり。お待たせしました」
外に出て草履を履いて、総ちゃんと並んで屯所の門を潜る。
「それじゃ、行こっか」
今日は総ちゃんが非番の日。二人で京の街を散策するのだ。


団子、金平糖、玩具、人形。色んなお店が街には構えている。気になるお店を見つけたら総ちゃんを引っ張り、逆に引っ張られ、あちらこちらを行ったり来たり。
隣を歩く総ちゃんの袖を、少し速いと私が引っ張ると、総ちゃんは渋々といった顔をして歩く速度を遅めた。
「へへ」
「うわ、変な顔」
「ほほほほほ」
楽しい。嬉しい。幸せ。総ちゃんのそういうところが私を“変な顔”にさせる。
本人には微塵も届いていない。秘めたる想いは幼馴染という関係が隠してくれる。
「通りに屋台がいっぱいだ」
「もうすぐお祭りだからね。夜には花火も上がるんじゃないかな」
「花火!」
思わず目を輝かせると、総ちゃんは私の反応を分かっていたようで
「二人で見に行こうか」
なんて呟いた。
「えっ…えと…いいの?」
「うん。近藤さんと土方さんが行ってこいって」
総ちゃんの意思じゃないんかーい!いつかの寄席のような声が脳内で響く。
「行く?行かない?」
「…行きたい」
でも行く。花火も見たいし総ちゃんも見たい。近藤さんと土方さんにお世話になりっぱなしだけど、素直に受け取ろう。

通りを歩き進めるに連れて人混みが激しくなっていく。隣にいたはずの総ちゃんが少し前へ出て、私がその後ろをついて行く感じ。他人の肩が当たり、よろけそうになる。
「総ちゃん、待って、ちょっと」
背の高い総ちゃんを見失うことは無い。その代わりに私が人混みに消える。
「遠い、気付け、私、遠い!」
必死に歩いていたら何だか足がつりそう。危ない。総ちゃんは私との距離に気付け。
「あっ!」

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設定タグ:薄桜鬼 , 沖田総司   
作品ジャンル:恋愛
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あめ(プロフ) - 帰蝶さん» ありがとうございます…!私が泣いて喜びました;;;;コメで元気もらえました、頑張ります! (2021年7月23日 10時) (レス) id: c4879c790e (このIDを非表示/違反報告)
帰蝶(プロフ) - 初めまして!とても面白かったです!沖田さん好きなので是非お時間ある時に続きを書いていただけますと泣いて喜びます!陰ながら応援しています! (2021年7月20日 1時) (レス) id: 8097c0e74f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あめ(雨星) | 作成日時:2021年4月26日 9時

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