0-1、白菊は眠りにつく ページ1
『今日、午後６時３４分。大型流星群の衝突が見込まれます。衝突は免れず、人類の希望は昨日宇宙へと旅立ちました。選ばれた彼らは、きっと新しい居住地を見つけ命を繋いでいくでしょう。
選ばれなかった私たちはここで死にます。…まず、命を選ぶって何なんでしょうね。
…神にでもなったつもりかよ！！！！』
「…かわいそ」
泣き叫んだシーンを最後にパッと画面が切り替わる。
テレビ越しに見たニュースキャスターがとても哀れで、なぜか人ごとのように声がこぼれた。
どうせ自分も死ぬと言うのに。
学校は臨時休校だ。あらゆる公共機関はその機能を停止している。すべての人が、安息の終末を迎えることが出来るように、らしい。
だが、TV越しの彼らはそれを受け入れなかった。自分たちを置いてのうのうと生きていく奴らの言葉になんか従いたくなかったんだろう。
「A、そろそろ薬飲みや」
「んー」
お母さんに言われて、握ったままの錠剤に目をやる。
かなり強い睡眠導入剤らしい。
これも政府がとった措置の一つだ。誰だって死ぬのなら楽に死にたいだろう。
最後はみんなで眠ってしまおうと言うわけだ。
簡単に言えば安楽死。この年で経験するなんて思ってもなかった。
全てがなんだか急すぎて、死ぬと言う実感がわかない。 これを飲んでしまえばそれで私は終わるのだ。
「はー…イヤな感じ」
＿＿＿＿＿
「Aー、寝るまでゲームせぇへん？」
「いいよ、しよかぁ」
薬を喉の奥に流し込んでお兄ちゃんとのゲームに興じる。馬鹿みたいに笑って、そのとき何だか、得難い時間を過ごしてたんやなって、ふと思った。
いつも通りで、何も変わらない。だけどきっと本能だけがわかってて。だって、心臓が、なんかうるさい。まだ動いてたいとでも言うように激しく鳴く。
時計を見る。今は、６時。
「あートリップしたいなぁー」
「あほ、無理やって」
「ワンピがいい。ワンピの世界行ってエースとか助けたい。Aは？」
「えー…。行けたら行きたいし、助けられたら助けたいけどなぁ。…生きてるだけで十分やと思うで？」
「……お前、今そういうこと言うなよ…」
急に泣き出してしまったお兄ちゃんに家族が集まってくる。次第にみんな泣き出すもんだから、なんだか悪い事をしたような気もするし、終わりが見えてきて嫌な気もする。
時計を見る。よく見えないけど、大体10分。
…死ぬまで、あと20分。
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BAL - あかりさん» ありがとうございます！そう言っていただけるととても励みになります。このイベントに参加できてよかったです！ (2018年3月14日 16時) (
レス) id: debcdffa86 (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - イベント参加ありがとうございます。設定や文章、何から何まで素敵でとても面白いです！これからも頑張ってください！ (2018年3月13日 23時) (レス) id: 2ef8cf0998 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：BAL | 作成日時：2018年1月15日 23時
