episode89 ページ44
「立派な貧血ね。」
『ははは…今朝、ちゃんと食べなかったツケが回ってきたよ。多分ね。』
耳鳴り酷いしなんか寒い。
「慢性的な貧血って言うより、鼻血が出た時に一時的になる貧血みたいな感じか?」
「ええ。おそらく撃たれて出た血の量と必要な血の量が釣り合ってない上に朝ごはんもちゃんと食べてないみたいだし作る血も作れてない感じよ。」
『ははは…無理は禁物ってやつだね…。』
と笑っていると哀ちゃんがブランケットを掛けてくれた。
「根本的な解決にはならないけれど。」
『あれ?バレてた?寒いの。』
「ええ。わかりやすいくらいに縮こまってるもの。」
『哀ちゃんの前だと空元気もバレそう。
ふふふ、ありがとう。』
「なあ灰原、博士に頼んで何か買ってきてもらう事って出来ねぇか?」
「どこに買い物に行ったかにもよるけれど…でも頼んでみましょ。」
『かたじけない…。』
それから哀ちゃんに言われたとおりの体勢になってゆっくりと目を閉じ休む。
寝るわけじゃないから2人が点けたテレビの音声を聞き流していた。
政府の掲げる方針についてだとか、それに対する意見だとか、宅配業者の配達員のやらかしだとか、いろいろ。
そんな中、一つだけ聞き逃すことが出来なかった話題があった。
「またやりましたねえ!太閤名人!!」
その声に私は思わず目を開けて、顔を上げ、テレビを見つめる。
『すっご…。』
秀吉兄の話題だった。
相変わらず凄い…。
またなにかの大会で優勝したらしい。
初志貫徹の扇子を持って、きちんとした和服に身を包んで、いつも生やしてる無精髭も綺麗に整えた姿。
テレビカメラと現実は差がある、ってよく聞くけれど彼に関しては日常生活を除いてそのまま。
凛とした立ち振る舞いが本当に映えるし、人を妙に引きつける。
私は頭をソファの肘掛に後頭部を乗せ、逆さの視界のままテレビを見た。
「将棋、好きなの?」
哀ちゃんが首を傾げていた。
私は「まあね」と優しく返す。
『でも出来ない物に対する憧れって感じだよ。
私運動神経もそこそこだし、かといって頭脳にステータス振られてるわけじゃないし。
だからこうやって自分の土地を見つけて自分で耕した土の上で綺麗に咲けるのが羨ましいんだ。』
2人からの反応はなかった。
天井を見つめて言葉を続ける。
『それが社会的に望まれない世界でも、なんでもね。
花が咲くだけで立派なことなんよ。』
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from bathroom(プロフ) - ありしゅさん» コメントありがとうございます!!ウアアアアアア気がついて下さりありがとうございます…私も好きな曲で誰か気がついてくれたらな、とかしんどい人いたら救われねえかなみたいな感覚でちょびちょび入れてみたので気がついて貰えて嬉しいです…!これからも頑張ります! (2021年10月24日 7時) (レス) id: 462ac0c112 (このIDを非表示/違反報告)
ありしゅ(プロフ) - 私の好きな曲の歌詞がいきなり出てきて吃驚しました!これからも応援しています! (2021年10月17日 9時) (レス) id: a9a93c108b (このIDを非表示/違反報告)
from bathroom(プロフ) - 桜茶さん» 語彙力が酷く低い返信本当に申し訳ないです… (2020年11月14日 10時) (レス) id: 462ac0c112 (このIDを非表示/違反報告)
from bathroom(プロフ) - 桜茶さん» ありがとうございます!!(´;ω;`) それに好きだなんて言葉本当に嬉しいです…これからも応援よろしくお願いします、本当にありがとうございます…!! (2020年11月14日 10時) (レス) id: 462ac0c112 (このIDを非表示/違反報告)
桜茶(プロフ) - 合格おめでとうございます!bathroomさんの作品はどれも好きなのでこれからも楽しみにしています。 (2020年11月8日 0時) (レス) id: 72bb70d964 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:from bathroom | 作者ホームページ:http://なし
作成日時:2020年6月14日 18時