赤井さん家の異能力者【名探偵コナン】【文豪ストレイドッグス】

episode75 ページ30

「分からないって…。」


『だって、やり直すって何をやり直すの？
そもそも、何を求めてるの…？』



その言葉に真純は固まった。



『…結局、皆自分が助かれば、自分が幸せになれればいいって思ってる。
…残念だけど私もだ。』



「A、いい加減にしなさい。
Aのことをずっと心配し続けて、最後まで諦めなかった真純の気持ちを踏みにじっているのが分からない？」



母は、押し付けるように、言った。
苦しかった。
だって探してくれたのは事実で、今までずっと思ってくれていたのも事実。
なのに。
それを受け入れられない感覚が苦しい。
それでも確かにわかるのは、私はこの人たちと合わない。
ただ、自分勝手、って言葉が重い。
私も私以外の人間もみんな自分勝手なのに。
私だけが責められている、そんな感覚。



『みんな…自分が幸せならそれでいい。
私も家族も他人も。みんな、自分勝手だから。』



私はベッドから降りた。



『探してくれたのは感謝してる。
見つけてくれなかったのも。
ただ、それを押し付けられることに関してはノーだ。
それを押し付けた時点で、自己満足に変わる。

私が探してあげた、大切な妹を、大切な娘を。』


「A。」


母が、鋭い声で私の名前を呼んだ。
真純も、私の名前を呼び、私に向かって歩き出す。


「A、話し合おう。
僕も、Aについて知らない。
Aも僕たちのことを知らない。
だから…」


『知らないんじゃない…そもそも、知ろうとしてなかった。』



私はベランダの方に後ずさる。
とても高い場所に部屋があるらしく、夏のくせに風が強く吹きとても冷たかった。




『過去は元に戻らない。
記憶を改変できても、起きた事実も変わらない。
やり直しも何も、1が1であるように変わらないものは変わらないんだよ。』



背中がベランダの塀のような柵に当たる。



『私は、真純たちとは暮らせない。』


「A。」



母が鋭い目付きで私を睨む。
私はポケットから携帯を取り出し電話をかける。




『私もあなたも、知ろうとしていなかった。
ただ、その事実だけがそこに在る。』




私は母にそう伝える。

電話のコール音が消える。




『…終わりにしよう。』




私はなけなしの笑顔を、不器用で器用な笑顔を向けた。





『最後に一つだけ、本当のことを言うよ。』





私は太い柵の上に登り、2人の方を見る。




『私が居なくなってから数年、ポートマフィアにいた。



そして人を殺した。』

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