episode71 ページ26
真純は戦う術がなかった。
転んでしまった。
私がうまく引っ張れなくて。
一気に真純に矛先が向く。
私なんかが、生きているより真純が生きた方がマシなんじゃ。
なんて、逃げながら感じていた私は真純に飛び交う矛先を庇う。
その時、2発、大きな銃声がした。
2発の重みが体を突き抜ける。
私は思わず、後ろに数歩下がり、壁にもたれかかった。
真純はショックで気絶していた。
その時気がつく。
あの小さな子がいなかったことに。
「あー。やっぱダメよね。
だって生き残りかけてんだもんね。
小さい子に化けても無理か!」
と、ニコニコと笑う拳銃を持った、あの小さな女の子。
いや、面影はあの子だが、今はすっかり大人の姿だった。
「でもまあ、おかげで1人死んだし。
あんなバカ死んで当然!」
なんて、私は頭を蹴られる。
その時全部を察した。
妙に言葉が達者だったり、しばらくの間でも全力で走る私に着いてこられたり、そんなことが出来たのは異能力のおかげでも何でもなく、ただ単に中身が子供じゃないから。
てっきり、身体能力を上げる異能力だと思っていた。
しかし違った。
「なんで?」という疑問とともに、一方的に殴られ続ける。
それも、弱ったことをいいことに、その子だけでなくこの場にいる18人全員が。
「やめてよ」という声すら通らないほど、殴る音の方が大きい。
でも、
『やめて!!!!』
私がそう叫んだ時、初めて声が通った時、私の異能力が発動した。
何をかけたのかはすぐに分かった。
殴る蹴る、と一方的にしてきた人達が急に戦うのをやめて、座りだす。
そして、「戦いたくない」と口々に声に出した。
私は異能力で彼らから「生きたい」から生まれる「戦意」を奪っていた。
心の声を聞くだけじゃなくて、幻覚そして心理作用まで出来る異能力は、すぐに勝敗をつけた。
あっという間に。
目の前で、黒いスーツの男に刺殺され、髪を乱雑に持ち上げられ、数発銃を撃ち込まれる。
血が、まるで噴水のように飛び散る。
戦いたくない私が生き残って、生きるために戦った人が死ぬ。
逃げた私が生きて、立ち向かった人が死ぬ。
自分の意思で立ち上がらない私が、自分の意思で立ち上がった人を殺した。
私はただ呆然と、吐き気を飲み込みながら立ち尽くす。
観客は大盛り上がりの反面、一瞬でケリがついた勝負に文句を零した。
そんな観客を私はただ、眺めていた。
観客を恨むよりも、自分を殺したかった。
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from bathroom(プロフ) - ありしゅさん» コメントありがとうございます!!ウアアアアアア気がついて下さりありがとうございます…私も好きな曲で誰か気がついてくれたらな、とかしんどい人いたら救われねえかなみたいな感覚でちょびちょび入れてみたので気がついて貰えて嬉しいです…!これからも頑張ります! (2021年10月24日 7時) (レス) id: 462ac0c112 (このIDを非表示/違反報告)
ありしゅ(プロフ) - 私の好きな曲の歌詞がいきなり出てきて吃驚しました!これからも応援しています! (2021年10月17日 9時) (レス) id: a9a93c108b (このIDを非表示/違反報告)
from bathroom(プロフ) - 桜茶さん» 語彙力が酷く低い返信本当に申し訳ないです… (2020年11月14日 10時) (レス) id: 462ac0c112 (このIDを非表示/違反報告)
from bathroom(プロフ) - 桜茶さん» ありがとうございます!!(´;ω;`) それに好きだなんて言葉本当に嬉しいです…これからも応援よろしくお願いします、本当にありがとうございます…!! (2020年11月14日 10時) (レス) id: 462ac0c112 (このIDを非表示/違反報告)
桜茶(プロフ) - 合格おめでとうございます!bathroomさんの作品はどれも好きなのでこれからも楽しみにしています。 (2020年11月8日 0時) (レス) id: 72bb70d964 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:from bathroom | 作者ホームページ:http://なし
作成日時:2020年6月14日 18時