episode47 ページ1
朝日がカーテンの隙間から差し込むその景色に私は一瞬違和感を覚え、焦る。
しかし、すぐに沖矢さんに泊めてもらっていたことを思い出し、ほっと胸を下ろした。
体を起こし、ひと伸びする。
そしていつの間にか手首に回していた、ブレスレットをパーカーのポケットにしまう。
ベッドからおり、リビングに向かう。
本っ当に広い家だ。
廊下までまるで迷宮の一部のようだ。
昨日、ちらっと沖矢さんに見せてもらった書斎は頭の上から足の先まで本だらけだった。
本当の家主の工藤さんという方のお父様が集めていた物らしい。
『あ、沖矢さんおはようございます。』
「Aさん、おはようございます。」
『寝心地最高でした。社員寮もそこの家も布団敷いてるんで。』
「そうですか、よかったです。
あ、あと朝ご飯を勝手に決めてしまったのですが…。」
『え、全然いいですよ。むしろ朝ご飯なんて大層なものを…。』
そして、「食べて下さい」と沖矢さんは食パンと胡椒がかかった黄身を潰した目玉焼きを出してくれた。
黄身があまり好き好まない私はこれで出されるのが好きだった。
『沖矢さん、黄身、潰す派なんですか?』
「いえ…間違えてひっくり返しました。」
『あ、そうなんですね。』
いただきます、と言ってパンを食べる。
何もつけられていない、ただの食パン。
それに目玉焼きを載せる。
美味し。
皆して、「ジャムは?」とか「黄身は?」とか言うけど…ジャムは時々で良いし、黄身を寄越すなら白身よこせとか思っている人種なのでこの組み合わせは最高だ。
「…もしかして、黄身あった方がよかったですか?」
と、沖矢さんは心配そうに私を見た。
私はハッとして笑いかける。
『そんなことないっす。むしろ黄身より白身派なので。』
美味しさあまり、社交モードをオフにしていた。
社交モードオフの私は表情筋を動かす回路と、他人と関わる意欲を高める機関が機能していないレベルで静かである。
この前は探偵事務所にいる時面白いことがあって思わず「ふふ」と笑っただけで「Aが笑った。明日は雨だ。」と言われた次の日、探偵社私以外の全員が傘を持って出社した。酷いものだ。
そんなことを思いつつ、私は美味しい朝ご飯を食べ切る。
目覚めのいい朝は久しぶりな気がした。
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from bathroom(プロフ) - ありしゅさん» コメントありがとうございます!!ウアアアアアア気がついて下さりありがとうございます…私も好きな曲で誰か気がついてくれたらな、とかしんどい人いたら救われねえかなみたいな感覚でちょびちょび入れてみたので気がついて貰えて嬉しいです…!これからも頑張ります! (2021年10月24日 7時) (レス) id: 462ac0c112 (このIDを非表示/違反報告)
ありしゅ(プロフ) - 私の好きな曲の歌詞がいきなり出てきて吃驚しました!これからも応援しています! (2021年10月17日 9時) (レス) id: a9a93c108b (このIDを非表示/違反報告)
from bathroom(プロフ) - 桜茶さん» 語彙力が酷く低い返信本当に申し訳ないです… (2020年11月14日 10時) (レス) id: 462ac0c112 (このIDを非表示/違反報告)
from bathroom(プロフ) - 桜茶さん» ありがとうございます!!(´;ω;`) それに好きだなんて言葉本当に嬉しいです…これからも応援よろしくお願いします、本当にありがとうございます…!! (2020年11月14日 10時) (レス) id: 462ac0c112 (このIDを非表示/違反報告)
桜茶(プロフ) - 合格おめでとうございます!bathroomさんの作品はどれも好きなのでこれからも楽しみにしています。 (2020年11月8日 0時) (レス) id: 72bb70d964 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:from bathroom | 作者ホームページ:http://なし
作成日時:2020年6月14日 18時