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episode54 ページ9

『…いよいよ、ですね。』

「嗚呼。」


隣を歩く太宰さんの顔を見上げる。
街灯で照らされた彼の顔は綺麗に、ハッキリくっきりと映る。
そして、微塵も緊張していなさそうだった。
ケラっとした、いつもの顔だった。


続きはポアロで話すことになった。
「こんな公の場で話していいんすか?」と聞くと、太宰さんは「いいんじゃない?」と笑った。
彼は私が感じているこの緊張を、微塵も感じ取っていないようだった。



それから妙な緊張感のままポアロに着くと、中には安室さんともう1人、女性がいた。


「いらっしゃいませ。」


とその女性がニコッとする。
想定外の人がいて私は密かに驚いた。
安室さん以外の人がいるとは思ってもみなかったから。


「あ、Aさん。あれ?そちらの方は?」


と安室さんが太宰さんのことを見て言う。


「あれ?安室さん、お知り合い?」

「はい。Aさんとはこの前から度々来て貰ってて…あ、そういえば梓さんが居ない時ばかりでしたよね。」

『すみません、沢山お邪魔させてもらってます。』


私はそう、梓さんの方を見てお辞儀をする。
梓さんはニコッと笑って、「これからもよろしくね」と言ってくれた。


『あ、それとこちら、私の上司の太宰さんです。
ここの料理が美味しかったんで、連れてきました。』


口が裂けても「これから任務があるし…」とは言えない…。
それに、梓さんが居ることで一つ大きな心配が増えた。
私はチラッと太宰さんを見る。

しかし時は遅かった。


「綺麗な方だ…是非、私と心中を…!」


と、既にもう、心中の申し出を太宰さんはしていた。
心配していたことが見事に起こってしまった。

私は思わず、上司、ということを忘れて蹴りを入れそうになる。


『太宰さん、この先ここ利用できなくなるんで、心中の申し出は別の人に…。』


そう、柔らかくお願いする。


「…ぶぅ、Aのケチ。」

『可愛くしたって無駄ですよ。
邪魔になるんでさっさと食べて帰りますよ。』


と私は太宰さんを引っ張りながら、そして謝りながらテーブル席に移動した。

これじゃあどっちが上司だか分からないじゃん、とか思いながら。

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from bathroom(プロフ) - ありしゅさん» コメントありがとうございます!!ウアアアアアア気がついて下さりありがとうございます…私も好きな曲で誰か気がついてくれたらな、とかしんどい人いたら救われねえかなみたいな感覚でちょびちょび入れてみたので気がついて貰えて嬉しいです…!これからも頑張ります! (2021年10月24日 7時) (レス) id: 462ac0c112 (このIDを非表示/違反報告)
ありしゅ(プロフ) - 私の好きな曲の歌詞がいきなり出てきて吃驚しました!これからも応援しています! (2021年10月17日 9時) (レス) id: a9a93c108b (このIDを非表示/違反報告)
from bathroom(プロフ) - 桜茶さん» 語彙力が酷く低い返信本当に申し訳ないです… (2020年11月14日 10時) (レス) id: 462ac0c112 (このIDを非表示/違反報告)
from bathroom(プロフ) - 桜茶さん» ありがとうございます!!(´;ω;`) それに好きだなんて言葉本当に嬉しいです…これからも応援よろしくお願いします、本当にありがとうございます…!! (2020年11月14日 10時) (レス) id: 462ac0c112 (このIDを非表示/違反報告)
桜茶(プロフ) - 合格おめでとうございます!bathroomさんの作品はどれも好きなのでこれからも楽しみにしています。 (2020年11月8日 0時) (レス) id: 72bb70d964 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:from bathroom | 作者ホームページ:http://なし  
作成日時:2020年6月14日 18時

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