標的37 暗闇 ページ42
ランチアside
任務を終えてアジトに帰ってくると、酷く嫌な血の匂いがした。
敵襲だと悟り、銃を手に慎重に潜り込む。しかし周りは異様に静まり返っていて、味方だけでなく、敵の姿もない。
一先ずボスの安否確認のため執務室に向かう。しかしそこに広がる光景は、まさかのものだった。
「むく、ろ?」
血塗れた槍を手に、血溜まりの中で佇む骸。骸の周りには仲間だけでなくボスの息絶えた姿がある。
まさか、そんな。骸がそんなことをするはずがない。敵と交戦後なだけ、だろ?
「…なにがあった」
自然と声が震えてしまう。骸から出てくる言葉がただ怖かった。
骸はようやく俺の姿を見て、ランチアと俺の名をポツリと呟いた。その声はいつもの飄々とした声ではなく、噛み殺したような声。
「骸がやったのか」
どうかちがうと言ってくれ。俺は骸を撃ちたくない。
「……」
骸は何も言わず俺の横を通り過ぎようとする。
無言が意味するものは、つまり。
「待て。お願いだ。このまま何も知らずに終わりたくはない」
骸は歩みを止める。
「…ごめんなさい」
その懺悔は一体だれに。
俺は銃の引き金を引いた。だが、それは不発になる。何故か銃がドロドロに溶けてしまった。まさか骸にこんな力が。
「…殺させないでください」
悲痛な叫びだった。
なぜ、なぜだ。こんな風に無効化できるなら、他の仲間も殺さなくてよかったのに。それになぜ俺を生かすんだ。殲滅目的なら、俺も殺すべきだろう。
「お前は無差別に人を殺したりしないはずだ。理由があるんだろ。その理由になぜ俺は入っていない?」
「…っそれは」
骸の目が激しく揺れる。
「……わかってます。ここで貴方のことは殺した方がいいって。でも、それだと、本当に僕は」
殺人鬼になってしまう。
泣きそうな顔で、そうこぼした。
骸、お前は一体何に駆られてこうなったんだ。
本当ならば、仲間を皆殺しにした骸を許せるはずがない。
しかし幼い子供がそうせざるを得ない理由がそこにあるのなら。知りたいし、救ってやりたい。
おかしなものだ、付き合いの長い仲間の恩よりも、数年一緒にいただけのやつを気にかけるなんて。
でも俺にとって骸たちは初めての弟分であり、孤児という俺と似た境遇で、大切な存在だ。子供が苦しむ姿は、見ていられない。
「俺はお前のことを許せない。けど、救ってやりたいと思う。もしもお前が本当に後悔しているのなら…教えてくれないか」
骸の目からは一筋の涙がこぼれた。
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南条(プロフ) - 黒猫♪♪さん» 感想ありがとうございます!とても励みになります…! (2018年4月10日 7時) (レス) id: 05ac4354b9 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫♪♪(プロフ) - とても面白いです!自分のペースで更新頑張ってください! (2018年4月7日 4時) (レス) id: 80ca512ce2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:南条 | 作成日時:2013年8月30日 0時