標的33 処女懐胎 ページ38
僕がここを抜け出してしたかったことはなんでしょう。
……なんて、わかりきった質問ですよね、僕の両親を殺したリックという男を見つけて復讐すること。
それから、世界中のどこかにいる私の大切な友人を見つけ出すこと。その2つのみです。
しかしどちらにしても一切手がかりのない今は情報収集する他ありません。
ファミリー殺しという重罪を犯した僕は、警察からもエストラーネオファミリーに近しい他のファミリーからも逃げなければならず、あまり大胆な行動はできません。ですが、この程度で僕は諦めたりしませんよ。姿かたちを変えてでも、僕のしたいことをするだけです。
***
骸様は本当に外も中身も綺麗な人だった。僕達を地獄から救ってくれただけでなく、新たな名前と居場所をくれた。
聖母マリア様というのはこういう人を指すのだろう。
慈愛の手で僕達を撫で、育み、愛をくださる。僕は、この人の手を振りほどくことなどできない。
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僕達の新たな人生がスタートした時から2年経った。
その間にも、僕達は骸様から様々なことを教わった。武術にサバイバル術、はたまた学も。
日本語を教えられた時は、驚いた。なぜ英語ではなく日本語なのかと聞けば、英語話者はその辺にいるから何となくわかるだろうし、僕達は日系ですからね、と。
骸様が日系だったとは気づかなかった。イタリア人らしい目鼻立ちの通った顔にしか見えない。
犬は日本語習得に苦戦してたけど、骸様は決して無理強いはしなかった。でも僕達のためを思って、教えてくださっているのは十分わかっていたから、犬も根をあげたりはしなかった。
僕達は足がつかないように、居住地を転々とする生活をしている。街で少し稼いで貯まったら移動して、の繰り返し。骸様は幻術で大人に変身したり、別人に成り代わったりして、お金を稼いでた。
以前、骸様の口から聞いた野望。ある男への復讐と大切な人との再会。その情報を少しでも得るため、骸様はイタリアを離れなかった。それで僕達にも危険が降りかかることを骸様は気に病んだのか、こう聞いてきたことがある。
「もしも平穏な日々をお望みでしたら、君たちを解放しますよ」
しかし骸様から離れてしまったら、僕達は生きる気力を無くす。骸様がそう望まれるのであればそうしますと言うと、いえ僕は2人にいて欲しいですからと言ってくれて、僕達は天にも昇る気持ちだった。
僕達の願いはただ1つ。骸様の願いが果たせるように、どこまでついて行くだけだ。
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南条(プロフ) - 黒猫♪♪さん» 感想ありがとうございます!とても励みになります…! (2018年4月10日 7時) (レス) id: 05ac4354b9 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫♪♪(プロフ) - とても面白いです!自分のペースで更新頑張ってください! (2018年4月7日 4時) (レス) id: 80ca512ce2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:南条 | 作成日時:2013年8月30日 0時